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マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その38

2014年04月01日 19:31

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」三機目

202 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [sage]:2012/03/15(木) 00:44:32.55 ID:gpZcGv6AO
――――

ダリル「隊長ッ!!」

グラハム「来るな、ダリルッ!」

 二つの異なる刃が唸りを上げて目の前に迫る
 胸元を無残に抉られたフラッグでは、逃れる術もあるはずがなかった

 ダリルのオーバーフラッグが割り込み、ビームサーベルで真っ向から受け止める
 だが、一瞬の閃光と共に両腕は吹き飛ばされ、それぞれが建造物に叩きつけられ粉々に散った

グラハム「ダ……!」

グラハム「ダリル・ダァァァァッジ!!」

 崩れ落ちるフラッグ、そして立ちはだかる紅のガンダム
 脳裏に浮かんだのは、MSWAD基地をスローネが襲撃したあの日、あの時
 ハワード・メイスンが逝った、あの瞬間の映像だった

 ――割れんばかりの雄叫びと、最大出力で吶喊するオーバーフラッグ

 グラハムの咆哮と共に、二機の刃が交錯した


――紅海基地・中東側――

 元より真っ赤に彩られた装甲に、更なる朱を足したトランザムアストレア
 地に墜ちた黒き巨鳥を見下す深紅の悪魔は、半ばから砕かれたフェイスカバーを自ら剥がしガンダムヘッドを露わにする

874『フォン、トランザムの限界時間到達までカウント30』

フォン「あげゃ、思ったよりかかっちまったか」

フォン「撤退する。高度を維持すりゃ粒子不足を叩かれる心配も無いだろう」

874『よろしいのですか? オーバーフラッグスは全機健在ですが』

フォン「どうでもいい、手土産があれば十分だ」

874『了解』

フォン「まぁ、俺様のガンダムに傷をつけたのはまあまあだと誉めてやるか」

フォン「あげゃげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!」

 二機の間に転がるビームサーベルが、光を失う
 見下されたフラッグ、左腕は引きちぎられアストレアの手の中にある
 他のオーバーフラッグスもまた手酷く傷つけられており、無傷なのはマリーダ機と、たまたま離れていたリディ機のみであった

マリーダ「ッ!」

フォン「おっと、今更強化人間とやり合う趣味はない!」

マリーダ「逃げるか、ガンダムッ!!」

フォン「そう睨むな……勝敗は決している」

フォン「あばよ、フラッグファイター! あげゃげゃげゃげゃげゃげゃッ!!」

 超速で去りゆく背中を見つめ、グラハムは血が滲むほどに強く、唇を噛み締める
 じわり、じわりと、敗北の味が口一杯に広がっていった

グラハム「見逃されたと……いうのか……!?」

ジョシュア『ダリル! 返事しろ、おいッ!』

グラハム「ッ!?」

リディ『くっ、ダリルさん! 隊長!!』

マリーダ「マスター、ダリルが……!」

グラハム「ダリル!」

 敵はガンダムの突入と同時に撤退、既に目視範囲には一機たりとも姿は見えない
 そのことからもあのガンダムが反国連軍に関わっているとは言い難い……と、後に判断したのはカティ・マネキン大佐であった
 たった一機のガンダムに壊滅的打撃を受け、ただ無様に見送るしかない
 それが今のグラハムの、オーバーフラッグスの現実だった

グラハム「ダリル、私を庇って……!」

ヴィクトル『衛生兵……衛生兵はまだか……!』

ジョシュア『ダリル、ダリィィル!!』

 圧倒的な性能に叩き潰され、膝を屈し、地を舐め這いつくばって
 悠然と背を向けられ、追うことも出来ず、矜持を目の前で踏みにじられて

グラハム「何が……」

グラハム「何がフラッグファイター……!!」

 たった数分の出来事に打ちのめされ、思い知らされた

 ――彼等は、空を取り返せてなどいなかったということを


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――ガンダムアストレア・コックピット――

874『…………』

874(フォン・スパークの奇襲タイミングは完璧だった)

874(グラハム・エーカーのフラッグが新型MSの腹部を刺し貫いた瞬間、海面より浮上し新型MSの背後から強襲)

874(新型MSごとフラッグを斬りつけることで胸部装甲と基幹部に損害を与え、倒れ込んだ隙に周りのオーバーフラッグスへ即座に攻撃を開始する)

874(これに関してはオーバーフラッグスの奇襲に対する反応速度の高さもあり、よくて中破程度に抑えられた)

874(更にダリル・ダッジ機が無傷でアストレアの前に立ちふさがり、グラハム機を庇う)

874(フォンはアストレアの加速力とトランザムの爆発的出力に任せ、ビームサーベルの上から押し切りダリル・ダッジを圧倒)

874(そして、その一瞬の隙間を縫うようにグラハム機のビームサーベルが突き出されアストレアの胸部に……)

874「……あのタイミングの一撃、シェリリンのGNリフレクションがなければ……」

フォン「違うな」

874「!」

フォン「GNリフレクションがあるからこそ突っ込んだ。俺様に見抜けぬものなどない」

874「……」

874「結果論ではないと、いうことですか? フォン」

フォン「当たり前だ」

874「…………」

874(最初の奇襲の瞬間、マリーダ・クルスがグラハム・エーカーから離れていたのが一番の成功要因だろうが……)

874(この場合運も実力のうち、と考えるべきだろう。フォン・スパークという存在から考えて……)

フォン「あげゃ?」

874「いえ、何も」

フォン「それより腹を括れよ874」

フォン「イオリアの爺さんの隠し子共だ……鬼が出るか蛇が出るか」

フォン「楽しみじゃねえか、あげゃげゃげゃげゃげゃ!!」

874「……光暗号通信、着陸を許可するとのことです」

フォン「降りる!」

874「了解」

 ・
 ・
 ・

 アフリカ大陸の閑散とした荒野、岩山と枯れ木の立ち並ぶ生の尽きた土地

 それらがまるで上辺とでも言うように巨大な二枚扉が口を開く
 アストレアを飲み込み、再び閉じれば元の木阿弥
 そこはもう一つのヴェーダが作り出した、本来あってはならない隠れ蓑……


――秘密基地――

 周囲の緊張感は最高潮を迎えていた
 それもそのはず、世界にたった四機で喧嘩を打った【ガンダム】が目の前にいるのだ
 騒がないのは頭のネジが飛んだ戦争屋か自殺志願者か、よほどの馬鹿だけだろう

ジンネマン「来たか、予定通りとは憎たらしい」

 見上げれば思い出す、地上に降りた直後のあの記憶
 今思えばあれもただの激しい自己紹介に過ぎなかったのかもしれない
 一応ギラ・ドーガを二機とヅダを待機させてはいるものの、此処まで入り込まれてしまえば状況は同じだろう
 【大佐】からも手荒な真似はするなと釘を刺された以上、黙って相手の出方を待つしかなかった

ネフェル「なんだ、キャプテンはギラ・ドーガに乗らないの?」

ジンネマン「ネフェル、お前こそイナクトに乗らんのか」

ネフェル「見れば分かるでしょ? 仕事終わりのシャワー浴びて、またパイロットスーツなんて御免被るわ」

ネフェル「それにあたしのイナクトじゃ、逆立ちしたってあれを止められやしないわよ」

ジンネマン「生身でいるよりは、生き残る可能性が高いかもしれん」

ネフェル「今更だよ。何したって死ぬときゃ死ぬ、それだけさ」

 濡れた白髪をタオルで拭きながら、ネジの飛んだ戦争屋は煙草に火をつけていく
 アストレアが左腕に握ったフラッグの腕部パーツを手離せば、足元に群がっていた兵士たちは叫びをあげその場から逃げ出した

ネフェル「相変わらずむちゃくちゃね、あの子」

ジンネマン「とりあえずやり合うつもりはなさそうだが……人払いしてさっさと本題に移るか」

ネフェル「あれ、クラウスは?」

ジンネマン「さっきガンダムを撮るとかいってカメラを取りに行ったきりだ」

ネフェル「馬鹿だったの? あいつ」

ジンネマン「今頃気付いたのかお前、アイツ馬鹿だぞ」

――――

クラウス「くしゅんっ」

クラウス「風邪かな……?」

――――

 談笑もそこそこに、アストレアの足元に寄る二人

 開け放たれたコクピット、見下ろす不敵な笑みがそれを迎えた
 最狂のガンダムマイスター、フォン・スパーク
 以前ジンネマンらに襲いかかったことなど、まるでなかったかのような態度であった

フォン「あげゃげゃげゃ、まだ生きていたのか? ネフェル・ナギーブ」

ネフェル「生憎、しぶとさだけは定評があってね」

ジンネマン「お前がガンダムのパイロットか……【久し振り】だな」

フォン「あぁ、【お久し振り】」

ジンネマン「人と話したければまず礼儀を知ることだ。見下してないでさっさと降りてこいこのクソガキ」

フォン「あげゃ、そうさせてもらうぜこのクソジジイ」

 フォンはワイヤー伝いに降りてくると、手土産のフラッグの腕に足を置きジンネマンに顔を近付けた
 至近距離でぶつかる視線と視線、睨み合う二つの眼差し

 それを見つめるガンダムマイスター874の電子の脳髄は、こう考えていた

 西暦世界の異端児【フォン・スパーク】と、本来この世界に存在し得ぬ【袖付き】
 この二つの邂逅が何を意味するかは、ヴェーダを介してみても分かりはしないだろう
 だが、それが平穏な結果を生むことはまず有り得ない……と


――前線基地――

 まだ1ヶ月と経っていないのに、風景はまさに荒廃の一言
 破壊されたMSの残骸さえ処理されていない状況からは、戦争の臭いがくすぶり漂ってくるような気さえした

リディ「……」

ルドルフ「ひでえな、こりゃあ」

タケイ「…………」
 まず帰還した隊員達の目に付いたのは、基地に空けられた【穴】であった
 地面が丸々抜けたような穴が三ヶ所、重要区画の隣にぽっかりと存在しているのだ

ジョシュア「残念ながら真実だったわけか……突拍子もないから少し軽く考えてたけどよ」

リディ「地面からの侵攻、脅威のメカニズムって訳ですか」

 穴はどれほど下に続いているのだろうか、見当もつかないほどに深い
 残留反応から計算するに、どうやらMSにより掘り出されたものらしい
が、そんなことが本当に可能なのか、全く想像も出来ない自分がいた

ヴィクトル「皆、集まってくれ」

リディ「大尉」

ルドルフ「どうでしたか? 司令部は」

ヴィクトル「状況は、はっきり言って最悪だな」

ヴィクトル「二日前に到着したカティ・マネキン大佐がグッドマン司令に協力し、不眠不休で指揮しているらしいが、被害が大きすぎて何が何やら……」

ヴィクトル「見たけりゃ仮設管制室に行ってこい、スリムなグッドマン司令が見れるぞ」

ジョシュア「見たいようで見たくねぇ……」

ヴィクトル「アフリカ側の基地も、謎のMAによって破壊されちまった。MS二十七機損失、中破小破含め三割超」

ヴィクトル「俺達の紅海基地は戦力の被害こそ少なかったが、オーバーフラッグスのダメージが強すぎて到底賄いきれんのが実状だな」

ルドルフ「くそっ! やってくれるぜ反乱軍の奴ら」

ジョシュア「デカブツの主砲にケツ掘られて負けたぁ、ヤザンでも同情したくならぁな」

リディ「これからどうなるんです? まさか撤退とか……」

ヴィクトル「国連軍の威信もある……まずそれはあるまい。ガンダム同様、まずは敵新型の戦力の解析と戦術の確立が課題となるがな」

ヴィクトル「新型が水中性能を重視する以上、此方の地上侵攻に対抗出来るとは考えにくい」

ジョシュア「隊長やヤザンがダメージを与えられた以上、GNーXならもっとやりようがあるはずだからな」

ヴィクトル「勿論、これでは当分戦いようもあるまいが……」

タケイ「……」

リディ「ダリル少尉、大丈夫ですかね」

ルドルフ「……大丈夫なわけあるもんか」

リディ「ですよね……」

「お~い! 準備できたぞ~!」

ジョシュア「おっと、お呼ばれか」

リディ「? 飯ですか」

ジョシュア「馬鹿、お前聞いてなかったのか? 発掘だよ発掘」

リディ「???」

タケイ「……」

ジョシュア「駄目だコイツ、マジで何も聞いてなかったのか」

リディ「……スイマセン……」

ジョシュア「しっかりしろよお坊っちゃん……じゃあお前は……」



 ・
 ・
 ・



「命に別状はありません。粒子汚染による人体影響も無いので、しっかり治療すれば無事に退院出来ますよ」

マリーダ「ありがとうございます」

「生まれつき頑丈なんでしょう、聞かされていたよりずっと軽傷でしたから」

マリーダ「ふふ……成る程」

「ですが、途中で抜け出したり出来る状態じゃあありませんからね。フラッグファイターは医者の間じゃ、嫌な噂が多いから……」

 軍医らしい軽口に一安心しながら、マリーダは今日初めて安堵の感情を見せる
 これでオーバーフラッグス全員の無事、再起が確認された
 特にダリルの登場していたフラッグは完全に破壊されていたのもあり、その安否は皆の心を煩わせていたのだ

マリーダ「……まだ、ハワード・メイスンに会いに行くわけにはいかないよな。ダリル」

 医師も次の患者に向かい、機器の脈動だけが耳をくすぐっていく
 付き合いも長く、オーバーフラッグスのまとめ役としてグラハムの信頼が最も厚い男だ
 まだ死ぬべき男ではない。眠りに就くダリルの肩に手を置き、マリーダは静かに語りかけていた

マリーダ「!」

 と、背中に当たる微風。扉が開いたことを知らせる風だ
 背後に立つのは、恐らく彼だろう
 振り向く前からそれは確認に変わっていた

グラハム「…………」

マリーダ「マスター」

グラハム「先ほど医師から報告を受けた。ダリルは無事だそうだな」

 立ち上がろうとするマリーダを制止し、傍らに立つグラハム
 ダリルの寝顔を覗き込んだその表情は、暗い後悔の念に沈んでいた

グラハム「……自惚れていた」

マリーダ「え?」

グラハム「オーバーフラッグスならば、いや私ならばガンダムに旧世代機でも対抗しうる……」

グラハム「そんな増長が、今回の結果を生んだのだ」

マリーダ「マスター……」

 何時もならば否定するであろうマリーダも、こればかりは反論が浮かばなかった
 常に攻撃の側に立てればオーバーフラッグでも対抗しうる、確かにそれは事実だ
 しかしひとたび立場が逆転すれば抗うことは出来ず、この様な形の結末を迎えることになる

【旧世代機では、ガンダムに勝てない】

 分かりきっていた、そのはずなのに
 グラハムは微動だにせず、横たわる部下の姿を見つめていた

マリーダ「……しかし、我々がガンダムに通用していたのは紛れもない事実」

マリーダ「ダリルもあの日、その矜持を胸に貴方の背中を守っていた筈です」

グラハム「……」

マリーダ「……確かに、グラハム・エーカーは最強のフラッグファイターです」

マリーダ「でも、どうしようもないことはどうしようもない。人は人である以上、神にはなれないから」

マリーダ「だからオーバーフラッグスがあり、カタギリ顧問がいて……私が存在していられる」

グラハム「マリーダ……」

マリーダ「あまり御自分を責め苛まないでください、マスター」

マリーダ「ダリル・ダッジの……貴方を誰よりも尊敬する、勇敢なフラッグファイターの為にも」

 それは慰めの言葉ではなく、労りの言葉とも違っていた
 敢えて言うならば、覚悟であった
 軍人である以上避けられぬ死の可能性、そしてそれを受け入れ職務を全うせんという覚悟
 それを改めて言葉にした、オーバーフラッグスの総意であった

グラハム「……」

グラハム「先走るな、という念押しにも聞こえるな?」

マリーダ「あまり速く飛ばれては、追いつくのも一苦労ですから」

 向かい合って聞いているはずの言葉は、グラハムは背中で受けたように感じた

 ――もし

 ――もし、その時が来たとしても

マリーダ「マスター」

グラハム「ん?」

マリーダ「もし、その時が来たとしても……」

 ――あなたは

 ――あなただけは



『失礼します!』

グラハム「!」

マリーダ「!」

リディ「あ、隊長……マリーダ中尉も来ていたんですか」

グラハム「リディか、ダリルなら無事だ。粒子による細胞障害も起きてはいない」

グラハム「全治二ヶ月、重傷だが後遺症の心配も無いという。皆に報せてくれ」

リディ「え? あ、はぁ……」

マリーダ「……」

グラハム「なんだ、その反応は。言いたいことは口にせねば分からんぞ、マーセナス准尉」

リディ「……えーっと…………」

リディ「お邪魔しちゃったかな、なんて。へへ」

マリーダ「っ……!」

リディ「うごっ!!?」

 次の瞬間、廊下にまで響き渡る重厚な殴打音
 リディは頭を抱え膝をついた為、真っ赤に染まったマリーダの表情を見ることは叶わなかった

マリーダ「馬鹿をぬかす暇があるならさっさと機体の修理に手を貸せ……!」

リディ「ぼ……暴力はいけない……」

グラハム「くっくっ……」

マリーダ「マスター!」

グラハム「失敬。だがこれ以上の騒音は病院のマナーに反するな」

グラハム「行くぞフラッグファイター。ダリルの不在を支えるのはオーバーフラッグス一人一人の双肩だ」

グラハム「重さに潰れるなよリディ」

リディ「肩幅は広い方ですので、幾らでも!」

グラハム「上等ッ!」

 病室から足早に、それでいて静かに退出する三人
 ダリルは薬によって深い眠りについているのだが、誰に言われた訳でもなく、自然と彼等は静寂を重んじた

グラハム「……」

 最後に、小さな敬礼がフラッグファイターに送られる
 再び瞳に火を点した男からの、決意の表れであった

グラハム「マリーダ」

マリーダ「はっ」

 リディはすぐさま二人と別れ、部隊の仲間にダリルの無事を知らせに走っていった
 まだリディの背が消えぬ内に、堪えられなくなったようにグラハムが口を開いた

グラハム「もう、もしもの話などするな。想定も金輪際許さん」

マリーダ「!」

グラハム「異論反論、一切認めん。いいな?」

グラハム「付いて来いマリーダ。私がどれほど速度を上げたとしても、お前だけは隣にいろ」

マリーダ「……」

マリーダ「了解、マスター」

グラハム「良い返事だ」

 マリーダは、ふと思った
 以前のグラハムならば、戦場の死は兵士の常であると、其処まで深く考えはしなかっただろう
 いや、考えていたとしてもそれを見せなかっただけなのかもしれない

 それを自分やリディ、他々の部下に僅かでも垣間見せている
 優しさは得てして弱さに繋がる。その兆候は、確かに感じていた

マリーダ(……良いじゃないか、甘くとも)

マリーダ(そうでなくては、支えがいも無い)

グラハム「何を笑っている、マリーダ」

マリーダ「いえ、何も」

グラハム「?」

 変わることが世の常なら、彼の変化もまた当然のことなのだろう
 人も国も、世界さえもいつかは変わっていく
 そのままでいられるものなど、この世に何一つとしてありはしない

 それでも、願わくば……
 変わらぬまま、こうして隣に居続けられんことを
 マリーダは言葉にせず、内なる神にそっと祈りを捧げた


――仮設司令室――

マネキン「グッドマン司令、そろそろお休みになった方がよろしいのでは?」

グッドマン「何故かね」

マネキン「司令が最後に仮眠を取ってから既に三十七時間が経過しています。食事は三回、このままではお身体に障りましょう」

グッドマン「ふん、私のタイムスケジュールを覚えていられるとは、流石天才。随分余裕と見える」

グッドマン「君には分かるまいよ。受け持った基地を破壊された屈辱の味などな……」

マネキン「……」

マネキン(重症、だな。無理もない)

マネキン(今回敵部隊が執った作戦は過去類を見ない……いや、見たとしても此処まで規模の大きなものはなかっただろう)

マネキン(掘削用のMS……そもそもこんな変態的なものをよく造ったものだ……を用いた地中からの強襲、その後基地を盾にサイクロプスを展開、警備中のMS隊を次々に攻撃)

マネキン(同時に予め基地に忍び込ませていた工作隊が基地の重要区画及びMSドッグを爆破、その機能の破壊を確認し即座に離脱……)

マネキン(リカバーが間に合った分、むしろ司令はよくやれた方だ)

マネキン「仰る通り、前線基地は壊滅的打撃を受けました」

マネキン「基地機能の一刻も早い復旧は我々が成すべき使命であり、この紛争に参加している兵士全てが強く願うところでもある」

グッドマン「そこまで分かっているのなら……」

マネキン「ですが――どの様な状況に置かれても、司令がこの基地の最高指揮官であることには変わりありません」

マネキン「もし司令が過労で病床に伏すようなことがあれば、復旧作業はそれこそ致命の遅延に晒されることと相成りましょう」

グッドマン「ぬぐっ……」

マネキン「不敬、無礼は承知の上です」

マネキン「御身の健勝が守られるならば、このカティ・マネキンは軍法会議も辞さぬ覚悟とお考え下さい」

グッドマン「…………」

マネキン「今ならばジェジャン少佐、エーカー少佐の両名が健在」

マネキン「復旧作業に関してはエーカー少佐に些かの不安を覚えますが、副官であり、基地を知るジェジャン少佐がそれを補って余りある能力を発揮してくれましょう」

マネキン「司令の御不在の間だけならば、十分耐えられるかと」

グッドマン「ふむ、それもそうか……」

マネキン(我ながら歯が浮く、煽てるのは好みではないのだが……)

マネキン(だが話したことは嘘ではないし、何より私が休むことを考えれば尚更万全でいてもらわねばならない)

マネキン(今ここでグッドマン司令に倒れられるのだけは、避けなくてはな)

オペレーター「司令、大佐。軍用回線から、基地への着陸要請の通信が入っています」

マネキン「何?」

グッドマン「こんなときに……誰からだ?」

オペレーター「発信者は……ライセンサーとだけ」

マネキン「!」

グッドマン「まさか、新しいライセンサーだと?」

マネキン(それとも……彼女なのか……)

オペレーター「如何致しましょうか?」

セルゲイ『私が、その輸送機の応対に当たろう』

グッドマン「スミルノフ大佐……来て早々済まんな」

セルゲイ『オーバーフラッグスの機能しない現状、万が一に備えるのが我々頂武の使命と認識させていただきます』

マネキン「よろしくお願いします。大佐」

セルゲイ『うむ、構いませんかな? 司令殿』

グッドマン「……」

セルゲイ『了解です』

マネキン(突如として現れたガンダム……新しいライセンサー……謎の新型MS)

マネキン(事が起きるのが早過ぎる……間に合うのか、我々の対応は)

マネキン「ん、あぁそうだ、人員輸送用の緊急便は何時来るのだったか?」

オペレーター「確か一週間後だったかと」

マネキン「そうか、ありがとう」

オペレーター「確かあれは非軍属の客員や労働者を避難させる第二便のはずですが……一便をあれだけ出して、まだ乗る人が?」

マネキン「うむ……グラハム少佐たっての要請で急遽な」

マネキン「何でも、必ず送り届けねばならない友人がいるとのことだ」

オペレーター「友人?」

マネキン「彼のプライベートが謎に包まれているのは、今に始まったことではないさ」

オペレーター「たった一人の為に護衛付きの要人輸送機とは、職権乱用というかなんというか……」

マネキン「なに、いざとなればホーマー・カタギリを通じてユニオンに補償してもらうだけのことだよ」

オペレーター「いつものこと、ですね」

マネキン「あぁ、いつものことだ」

――――

ホーマー「ぶぇくしょいっ!!」

――――

マネキン「第二便の話を伝えたら私も食事を取るとするか……パトリック!」

コーラサワー『はい大佐! すぐにお持ちいたしますっ!』

マネキン「助かる」

コーラサワー『あ、ケバブにかけるソースはどうしましょう?』

マネキン「ヨーグルトソース以外に何がある」

コーラサワー『ですよね~、流石はフィンランド出身!』

オペレーター(は? チリソース一択だろ常識的に考えて……)


――東南アジア・海域――

 真夜中の闇に紛れライトグリーンの光を放つ艦影が、小島の茂みへと降りていく
 それは強襲用コンテナにGNアーマーのバーニアだけを付け足した、急増の輸送艇であった
 青と白に塗り分けられた装甲には無理やり塗装で接合した痕が見受けられ、事情を知らずともそれは痛々しさを感じさせるに十分なものであった

ティエリア「……着陸完了」

ヨハン「Eセンサー再確認、範囲内に敵影無し」

ヨハン「来てしまったな、イアン・ヴァスティには相当の無茶をさせてしまったが」

ティエリア「ソレスタルビーイングの一員であるなら当然の義務だ」

ティエリア「それに、彼でなければこのような突貫作業は頼めはしなかった。彼には感謝すべきだろう」

ヨハン「……そう、だな」

 ブリティッシュ作戦時と何ら変わらぬ出で立ちのティエリア・アーデとは対照的に、ヨハン・トリニティの顔には未だ癒えぬ傷を隠すかのように包帯が巻かれている
 辛うじて目鼻口だけが見えるその容貌は見る影もないが、その眼差しから確かな光をティエリアは見つけていた
 四人いた正規のガンダムマイスターも、今となってはティエリアただ一人である
 使える者は誰でも使う、当初ヨハンを連れて行くことにそんな程度の意識しか持ち合わせていなかったティエリアだが、ここに来て微かな変化を覚えてもいた

ティエリア「ヨハン・トリニティ、まだ約束の時間まで間がある」

ティエリア「包帯を巻き直したらどうだ? 見るに耐えん」

ヨハン「……そうか?」

 ヨハンは若干渋るような声で、額の分厚い布の壁を指でなぞる
 確かに巻き方はお世辞にも上手いとは言えないが、ヨハンの手は一向に解こうとしない
 彼がそれを望まない理由をティエリアは知っていたが、彼に気を遣うつもりも無いと考え言葉を続けた
 勿論、それらの思惑は一切表情に出さずして、だ

ティエリア「基地内において、君に唯一好意的に接してくれたリンダ・ヴァスティの心遣いを無駄にしたくない気持ちは理解出来る」

ティエリア「だが万が一それのせいで今回の作戦に支障が出るようなら、先の約束通り私は君を見捨てることも辞さない」

ヨハン「……」

ティエリア「只でさえ今回の作戦は不確定性が強い。此方にコンタクトしてきた【ヴェーダの眼】とやらも信用に足る相手かは判らないし、罠である可能性も否定は出来ない」

ヨハン「だが我々は来た。それら全てを理解した上で……!」

ティエリア「そうだ、だからこそ我々が出来うる努力は惜しまないでもらいたい」

ティエリア「……時間だ。付け直すなら早くすることだ、私はGNキャノンに乗る」

 言うや否やティエリアは飛び出すように席を立ち、振り向くことなく格納庫に消えていった
 ヨハンの返答も待たず出たのは、若干の後ろめたさを隠すためだったのかもしれない
 吐息と共に心を鎮め、ティエリアはコンテナ内部のライトに照らされた機体を見上げる

 そこに安置されていたのは、紫色の装甲とガンダムらしからぬフェイスパーツ、両肩部に二門ずつの粒子火砲を備えた試作支援MS【GNキャノン】
 ヴァーチェと外見、用途の似通ったMSであり、元々はガンダムの支援を目的に開発された代物だとイアンは語っていたが、本人もよくは分かっていないらしい
 そもそもこんなものを運用する可能性があり、事実存在していたのなら、何故実際の計画に僅かでも反映され得なかったのだろうか?
 もしこの機体が何らかの形で導入され、パイロットも確保出来ていたなら――

ティエリア(そうしたら……ロックオンも……)

ヨハン『ティエリア・アーデ!』

ティエリア「!!」

ヨハン『今からハッチを開く、後は其方で頼む』

ティエリア「あ、あぁ……了解した」

ヨハン『? 巻き直したのだが、まだ変だろうか』

ティエリア「問題は無い。ティエリア・アーデ、GNキャノン。出撃し周囲を警戒する」

ティエリア(彼が包帯巻き直す間、私はずっと呆けていたのか……?)

ティエリア(不味いな……邪推は目的を鈍らせる。集中せねば……私はガンダムマイスターなのだから)

 降り積もる疑念を払い、メットを固定しコクピットへと乗り込んだ
 乗り心地は上々、似ている機体の割にはヴァーチェより堅い印象をティエリアは受けた

ティエリア(…………)

 ――【ヴェーダの眼】に連絡を受けたのは、ほんの一ヶ月前に遡る
 それは何の前触れもなく入電してきた暗号通信から始まった
 物資や医療機器、そしてこのGNキャノンを搭載した補給艦――民間用のではあるが――を、とある座標に隠した、という連絡がファーストコンタクトだったと記憶している
 半信半疑で指定された座標を捜索したところ、連絡通りの物資が満載された補給艦は確かにあった
 ただ、この場所と時刻を記したデータを残し、まるで次はここだと言わんばかりに自動航行システムに記録まで作ってあるオマケ付きではあったが――

ティエリア(現在ヴェーダは我々ガンダムマイスターの情報にプロテクトをかけ、更には我々の追跡が出来ないよう細工を施している)

ティエリア(何故我々を見つけられたのか……何故我々を助けるのか……そもそも何者なのか)

ヨハン『聞きたいことは山積みだな』

ティエリア「……勝手に人の思考を読むな、不愉快だ」

ヨハン『顔に書いてある通りに喋っただけだ、気にするな』

ティエリア「何……だと……?」

ヨハン『その点においては、君は実に分かりやすい』

ティエリア「…………」

黄HARO『センサーニ感! MSセッキン! MSセッキン!』

ヨハン『来たか』

ヨハン『頼むぞティエリア・アーデ、万が一のときは君だけが頼りだ』

ティエリア「……言われずとも、こなしてみせるさ」

ティエリア「そういえば連れてきていたのか、そのHAROを」

ヨハン『我々に万が一のことがあっても、彼がいれば少なくとも【情報】は帰ることが出来るからな』

ティエリア「随分と後ろ向きだな」

ヨハン『間違いを重ねすぎれば……臆病にもなる』

ティエリア「…………」

 如何にも整備不足、というような重い音を立ててハッチが開く
 夕闇にGNキャノンの巨躯が浮かび上がると、そのボディは星屑が散りばめられたかのように満天の夜空に映えた
 武力を行使し、破壊をもたらす兵器に在らざる美しさだ
 ヨハンは僅かに見とれるも、すぐにコンソールに向き直った
 目視範囲にまで接近した未確認のMSからは、GN粒子のライトグリーンの淡い光が尾を引いていた
 オリジナル太陽炉を搭載したMS……此処までは予測の範囲内
 緊張感が波となりGNキャノンのコクピットを満たす、肝心なのはここからなのだ

ヨハン『GNドライブの識別は分かるか?』

黄HARO『データ照合…………GNドライブノ登録ト一致』

黄HARO『対象ノGNドライブ、ガンダムキュリオスノGNドライブト一致』

ヨハン『やはりヴェーダによって回収されていたのか……』

ティエリア「……だが、この機影は……」

 MSは規則性のある光、光暗号通信を放ち、GNキャノンに敵意が無いことを伝える
 受信すると同時に、GNキャノンは照準をMSに合わせた

ヨハン『ティエリア・アーデ!』

ティエリア「黙っていろ」

 その名に冠する程の威容を誇る、四門の粒子火砲がMSに向けられる
 暗号通信に返答も貰えず、武器を向けられたMSの次なる一手
 ヨハンは生きた心地がしないままそれをただ待つしかなかった

『困ったね、警戒されるのは予想通りだけど……まさかアジト護衛用のGNキャノンを持ち込む手段があったとは』

ティエリア「!」

ヨハン『通信回線に割り込みを!?』

『大丈夫、僕は敵じゃない。臭い言い方かもしれないけど……僕は君達の【希望】になりうる存在さ』

 言うや否や、MSは持っていたリボルバーバズーカをGNキャノンの足元に投げ捨てる
 続けて腰の両側に備え付けられたビームサーベルを抜き放つと、一つ、また一つと垂直に地面へと落としていく
 見る限り全くの丸腰、MSはそのままゆっくりと、地面へと降りていった

ティエリア「何の真似だ」

『見れば分かるだろう。武装解除さ』

『とりあえず顔を出すよティエリア・アーデ、君もキュリオスの太陽炉を失いたくは無いだろう?』

ティエリア「脅しのつもりか?」

『太陽炉を失いたくないのは僕もさ。それにこの機体も修理がすぐに出来る訳じゃないからね』

『此処で闘うのはお互い百害あって一利なし……だよ』

 ヨハンが強襲用コンテナのライトを使い、MSを照らす
 降り立ったそれは、青い装甲に身を包み、両肩にシールドのような装置を付けた【ガンダム】
 それは第二世代ガンダム【ガンダムサダルスード】を元にした、typeFと呼ばれる改良機であった

ティエリア「…………」

ヨハン『ティエリア・アーデ、とりあえずは話を聞こう』

ティエリア「まだ安心は出来ない」

ヨハン『落ち着け。キュリオスの太陽炉を取り返したいのは分かるが、今は当初の目的を達成するのが先決だ』

『もしもーし?』

ヨハン『一応確認はさせてもらおう。君が【ヴェーダの眼】である証拠はあるのか?』

『冷静だねヨハン・トリニティ。あのロシアの荒熊率いる頂武GN―X部隊から逃げ延びられただけはある』

ヨハン『……世間話がしたいだけなら、サダルスードを置いて消えてもらうだけだが』

《ちょっと! せっかくヒクサーが譲歩してくれてんのに、さっきから何なの!?》

ヨハン(……少女の声……?)

『まあまあ887、うん、懸念はごもっともだ』

『じゃあとりあえずサダルスードからは降りた方がいいね。話は……強襲用コンテナの中でもいいかな?』

ヨハン『構わない』

 ガンダムサダルスードのコクピットが開き、中から白いコートを着用した青年が姿を現す
 少し癖のある金髪に蒼い瞳、微笑を浮かべた中性的な顔は、街中を歩けば老若男女振り向かずにはおれまい美男子のそれであった

ヒクサー「うん……サダルスードはティエリアに見てもらうとしよう」

ヒクサー「行くよ887、黒HARO。此処にいたら二人が警戒を解いてくれないからね」

887「なーんか釈然としないなぁ」

黒HARO『シカタナイ、シカタナイ』

ヨハン『……私が出迎えるまでそこにいてもらおう。構わないな?』

ヒクサー「あぁ、問題はない」

 短いやりとりを重ね、話を進めるヒクサーとヨハン
 一分一秒が惜しいのはどちらも同じこと、許された時間の中でヨハンは可能な限りの警戒をして事に当たっていた
 ヨハンを待つヒクサーの横顔を、ティエリアは高感度センサーで拡大して表示する
 やがてティエリアの脳髄は、該当するデータを探し出し朧気ながら投影を開始する
 それは武力介入が始まる前、ヴァーチェが未だ粒子兵装と実弾兵装、どちらを実装するか思案の域を出ていなかった頃の記憶にあった

ティエリア「ヒクサー……まさか、そうか、君は……!」

ヒクサー「久しぶりだねティエリア、ヴァーチェフィジカルの模擬戦以来かな?」

ティエリア「生きて……いたのか……」

ヒクサー「あぁそうか、君にはあの後僕の【人間のデータ】が抹消された段階までしか知り得なかったんだったね」

ティエリア「【人間】? 【抹消】!? 何を言っている!?」

ヒクサー「済まないティエリア。ヴェーダはこの情報を君に開示するのを許可していない」

ヒクサー「いずれ分かるよ、これは君が必ず通らなければならない道だから」

ティエリア「……っ」

 通信は一方的に切られ、ティエリアは無駄にかき回された【知りたい】という感情に胸中を灼く羽目となった
 あまりに小さく、聞き取れない愚痴を吐き捨てると、ヨハンとヒクサーのやり取りに耳を傾けた
 自分の身を焦がす好奇心を癒せる何かを、会話の中から見出すために


――強襲用コンテナ――

ヒクサー「……君達が知りたい気持ちは理解できるつもりだけど、今僕は文字通り首輪が繋がっている状態だ」

ヒクサー「あまり君達からの期待には応えられないことを、あらかじめ伝えておこうと思う」

 そう言うとヒクサーは首筋を緩め、ヨハンにそれを見せつける
 傍らの887は明らかな拒否反応を示し、悲痛な表情を浮かべ目をそらした
 文字通りの首輪として装着されている、ソレスタルビーイング謹製の【爆弾】
 目の当たりにしたヨハンは小さく、やはりか、と呟いた

ヒクサー「そういえば、君はこれを知っていたんだったね」

ヨハン「以前フェレシュテのオリジナル太陽炉とガンダムの回収を試みた際、我々トリニティに逆らったフォン・スパークがヴェーダに反逆者と認定された時にな」

ヨハン「爆発すれば頸椎骨折、頸動脈破裂。普通なら即死してもおかしくないダメージを負う代物だとは理解しているさ」

ヒクサー「ふふ……ヴェーダ内部での演算の結果、フォン・スパークが死ななかったことにより爆薬の量は当社比五割増しだそうだよ」

ヨハン「あれを基準にしてもらってはかなわんが……まあいい」

ヨハン「君が【ヴェーダの眼】である証拠だが……」

ヒクサー「あぁ、そうだったね」

 爆薬の話を軽く切り上げると、ヒクサーは【証明】を淡々と述べ始める
 それはファーストコンタクトの際、補給艦に積まれていた物資の内約そのままであった
 補給艦内部にあった一覧を一字一句そのままなぞらえた語り口、勿論ヨハンもそれが証明になるだろうと最初から確認もしていた
 徹頭徹尾、隅から隅までを言い終えてから、思い出したかのようにヒクサーは付け加えた

ヒクサー「あぁ、後GNうまい棒が三本、コクピットの隙間に挟んであったはずだよ」

ティエリア『!』

ヨハン「……ティエリア・アーデ」

ティエリア『あぁ、確認した……』

ヨハン「……やはりあれはそういう用途の為のものか。用紙に記入されていないものだったから、恐らくとは思っていたが」

ティエリア(知っていてそのままにしていたのか……?)

ヒクサー「っっっ……やっぱりちょっと狙いすぎだったよね、ごめんごめん」

 声を出さない、音を飲み込むような特徴的な笑い方をヒクサーはする
 心なしか、会話を楽しんでいるような印象をヨハンは感じていた

ヨハン「ふう……まあいい。まず一つ、君を信用しよう」

ヒクサー「ありがとう」

ヨハン「話を聞くに、我々の知りたいこと全てには答えられないと言ったな」

ヒクサー「勿論、君達のリクエストに沿った情報提供はするさ」

ヒクサー「ただこれが綱渡りであることには変わりない……」

ヨハン「……そうまでして我々に関わる理由は何だ?」

887「ばっかねー、今だからこそなんじゃない」

ヒクサー「そう……【僕達のヴェーダ】が万全じゃない、今だからこそ、ね」

ヨハン「何?」

ティエリア『どういうことだ!』

ヒクサー「うん、その辺も追々説明していこうか……彼もそろそろ動き始めたみたいだし」

ヒクサー「じゃ、まずは何が聞きたい?」

 問われると、ヨハンは横に視線を泳がせた
 其処では改造され取り付けられた専用台座に安置されている黄HAROが、耳とおぼしき部位をパタパタと動かしていた
 ――もしあの男なら、ロックオン・ストラトスなら必ず最初にこの事を聞くだろう
 ヨハンはヒクサーに向き直ると、真っ直ぐ目を見つめて口を開いた

ヨハン「アレルヤ・ハプティズムと刹那・F・セイエイ……二人の居場所を知りたい」


――反国連軍・秘密基地――

フォン「あげゃげゃッ!!」

ネフェル「っ、なによいきなり笑い出して……」

フォン「今のはくしゃみだ」

ネフェル「はいはいくしゃみねくしゃみ……くしゃみ?!」

874『フォンには良くあることです』

クラウス「世界は広いなぁ……」

ジンネマン「何に感心してんだお前は」

クラウス「はは、まぁガンダムマイスターとやらを見るのは初めてで、つい」

ジンネマン「浮かれるのは構わんが、まだ最後の詰めが残っている」

ジンネマン「気は抜くなよ……っと」

 ジンネマンの横すれすれを、深くフードを被った少年が台車を操り足早にすり抜けていく

???「す、すみませんでした!」

ジンネマン「あぁ……構わんよ」

ネフェル「キャプテン、ちょっとダイエットしたら?」

クラウスは「ちょっと横幅が厳しくなってきましたねぇ、ははは」

ジンネマン「お前らなぁ……」

フォン「…………」

 誰も彼も皆、慌ただしく作業に従事している基地内では、珍しくもない光景
 しかしフォン・スパークの眼差しは、去っていく少年の背中にじっと注がれていた

874『フォン?』

フォン「……まさかこんなところで逢えるとはな」

フォン「面白くなって来やがったぜ!! あげゃげゃげゃげゃげゃげゃ!!」

 頭を両手でかきむしり、嬉しそうに笑うフォン・スパーク

 遠のいていく背中は、やがて通路の暗闇にかき消えて見えなくなった


???「…………」


「刹那・F・セイエイ、不明組織の基地に潜入完了。独自の判断により、介入行動を開始する」


To Be Continued


グラハム「今、何と仰いましたか……」

マネキン「…………」

グラハム「もう一度お答え願いたい! 今ッ! 何と言いましたかッ!!」

マネキン「……先ほど言ったとおりだ」
マネキン「【我々国連軍は、貴公が対峙したMSをガンダムと認めない】」

グラハム「……!!」


 ・
 ・
 ・


270 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [saga]:2012/05/15(火) 02:15:16.03 ID:6AXLnW2AO
今回はこれで終了だフラッグファイター

【GNうまい棒】

ヴェーダから支給されている軍用糧食(コンバット・レーション)の一つである
GNうまい棒とは形状だけの俗称で、実際はチョコバーのような固形物であり、GN粒子ももちろん入っていない
しかし凄まじい栄養価(一本食べれば一日分のあらゆる栄養を補給可能)と引き換えに飲み込むことすら困難なレベルの味に変化しており、食糧として扱うのに致命的な欠陥を持っている
名前の由来は第二世代ガンダムマイスター、ルイード・レゾナンス(フェルトの父)があまりの不味さに「これ絶対GN粒子入ってるよ」と呟いたことから
保存性も抜群である為備蓄量ばかり増えていくのが悩みどころ


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コメント

  1. 名無し―ネームレス― | URL | -

    Re:マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その38

    好きだったけど、続きがまだなのよねこれ…

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