スポンサーサイト

--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」 その39

2014年04月02日 19:24

マリーダ「了解、マスター」グラハム「マスターとは呼ぶな!」三機目

316 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [saga]:2012/07/14(土) 23:55:41.55 ID:0CQC0aDAO
――フェレシュテ基地――

 組織とは、様々な役割を担う者がいて初めて成り立つ集合体である
 ソレスタルビーイングもまた例外ではなく、実働部隊であるトレミーとガンダム四機を支えるため、多数の支援部隊を保持している
 その中で唯一、ガンダムを有し戦力を持った支援部隊
 それがフェレシュテ、だった

エコ「フォンがガンダムを使って国連軍を急襲……!?」

シェリリン「ウソ……それじゃあフォンは【袖付き】の仲間になったっていうの!?」

エコ「そうとしか考えらんないだろう……!」

シャル「…………」

 フェレシュテには特異な人材が多数在籍している
 パイロットとしての技量はガンダムマイスターにも劣らぬが、イレギュラー要素に極端に弱い予備パイロット:エコ・カローレ
 モレノ医師が戦地で保護し、ソレスタルビーイングの組織性から一員となった、フェルトの親友でもある技術士:シェリリン・ハイド
 そして以前は第二世代ガンダムマイスターにして、フェルトの両親の同僚、フェレシュテの提唱者兼指揮者の元マイスター:シャル・アクスティカ
 此処に元テロリストにしてガンダムマイスター、フォン・スパークを加えれば、フェレシュテの全構成員となる
 数は少ないがガンダム単騎で行える程度の作戦が主軸なだけに、人員は事足りていた
 その結果、誰もフォンを抑えることが出来ず、今ではGNドライブの無い二機のMSを抱えたまま立ち往生という有り様であった

シャル「……ヒクサーは……」

シャル「連絡は無いよ。フォンがいなくなってすぐ、ガンダムを持って消えたっきり……」

エコ「アイツ信用していいのかぁ? いきなり現れて、『フォンは危険な男だ』とか言ってきてよ……」

エコ「シャルが言うからガンダムと太陽炉預けたけど、あの太陽炉だってキュリオスのなんだぜ? 万が一太陽炉を失いでもしたら……」

シェリリン「文句言わないっ! ヒクサーはシャルの昔の仲間なんでしょ? じゃあ信じるしかないじゃない!」

エコ「アイツに預けなきゃ俺がだなぁ……!」

シェリリン「作戦とちょっとでも違うと命中率0パーセントのエコ・カローレ先輩がなんですって?」

エコ「……うぐっ……」

シェリリン「えーっとぉ? 第七次適性試験、【四つあるコンテナの内一番左のコンテナから武器を取り出す】の第一工程を改変、パイロットに無断で【一番右に武器を収納】したところ武器を取り出すのに四分三十五秒もの時間を……」

エコ「わーっ! わーーっ」

シャル「……」

シャル(あれから世界は目まぐるしいまでに動いている……ソレスタルビーイングの残存部隊との合流を急がなくてはならないのに……)

シャル(フォン……あなたは何処にいるの? 私はどうすれば……)

 シャルは眼鏡を外し、潤む瞳からそれが流れ落ちる前に拭い去る
 すると、モニターに通信の印が点滅し、応答を願うとばかりに点滅を始めた

シャル「!」

エコ「通信!? フォンか、ヒクサーか!」

シェリリン「シャル!」

シャル「繋げて」

 発信対象は、ガンダムサダルスードtypeF
 ヒクサー・フェルミに預けられた第二世代ガンダム
 しかし、意外にも回線は繋がった瞬間向こう側から切断されてしまう
 皆が呆気に取られていると、メールが一通、すぐに送られてきた
 内容は、たったの一文
 しかし、三人に僅かな希望を持たせるのに、これ以上はないものであった

『ソレスタルビーイングとの接触に成功、連絡を待て』

エコ「おい……これ……!」

シェリリン「ヒクサーがやってくれたんだよ……きっとそうだよ!」

シャル「ええ……ヒクサーなら、間違いないわ」

エコ「? じゃあ何故回線を切ったんだ?」

シェリリン「それは……」

シャル「……戦っているんだわ」

エコ「え?」

シャル「彼は戦っている……私達の敵と」

 シャルは確信と共にそう呟いていた
 それは、ソレスタルビーイングの中で初めて確認されたNTの能力の残滓が感じさせたのだろうか
 だが、これで少なくともフェレシュテの存在意義は守られた
 彼等は即座に行動に移る
 物資の積載、修理に必要になるであろうパーツの選別、追加のHAROの充電に起動
 今まで彼等がやってきたことをそのまま辿るように、作業は流れるように進んでいった

 彼等は必ず帰ってくる、そう信じて
 フェレシュテは自らの職務をこなしていった


←ブログ発展のため1クリックお願いします

 ・

 ・

 ・


ヒクサー「逃げろ887! 今すぐに!」

887『ヒクサー!』

ヨハン『ヒクサー・フェルミ! これはどういうことだ?!』

ティエリア『何故だ、何故……』

ティエリア『何故Oガンダムが此処にいるッ!?』

 急浮上を始める強襲用コンテナの背に、無数のビームが撃ち込まれていく
 サダルスードは武器を捨てその前に躍り出ると、圧縮粒子の小さな壁でそれを防いでいく

ティエリア『GNフィールド!?』

ヒクサー「ッ……サダルスードの粒子コントロールじゃ、せいぜい手のひら二つ分が関の山だけどね……!」

ティエリア『だが、守ることが出来るなら!!』

 GNキャノンの四門のロングキャノンが地面から狙いを定め、次々に対象に撃ち込んでいく
 盾がいるなら、自らが矛となればいい
 ティエリアらしい容赦のない粒子ビームの雨は、その敵の接近を許さず、少しずつ離してさえ見せる

ヨハン『緊急離脱を開始する!』

ヒクサー「例の座標で落ち合おう! すぐに追いかける!」

887『ヒクサー、必ずだよ!?』

黒HARO『ヒクサー、ガンバレ』

HARO『ティエリア、ティエリア』

ティエリア「私なら大丈夫だ、ヨハン、後は任せた」

ヨハン『了解した……!』

 隙を突いて一気に加速、コンテナはどんどんと高度を上げ、その場から離れていく
 サダルスードはGNキャノンに投げ渡されたリボルバーバズーカを受け取り、目の前の【Oガンダム】を睨む
 背に負う疑似太陽炉以外は、成る程確かにOガンダムと同じである
 武装は両手にビームガンを持ち、シールドは無いもののサーベルも二本、腰にはバズーカらしき装備も見える
 全く想定されていない乱入に、ヒクサーもまた心中穏やかではなく
 また、Oガンダムのパイロットから感じる感覚に、冷たい何かを感じ取っていた

ヒクサー「残って良かったのかいティエリア、これは罠かも知れないよ」

ティエリア「…………」

ヒクサー「こうやって君を分断し、太陽炉を奪うつもりなのかもしれない」

ティエリア「もしそうなら、こんな回りくどい手段で君は来なかったはずだ」

ティエリア「MSを運ぶ方法があることも知らないようだった……それに!」

ヒクサー「ッ!」

 Oガンダムは後方に飛び退くと両手のビームガンをそれぞれのMSに向け、引き金を引く
 襲いかかる粒子ビームをサダルスードはフィールドで弾き、GNキャノンは繊細な左右への挙動により的確に避けていく
 二機より反撃が返されればOガンダムは高く飛び上がり、回るように飛行してまた森の中に飛び込んでいく
 僅かに訪れた静寂、無人の離島に張り詰めた空気が広がっていくようであった

ヒクサー「それに、何だい?」

ティエリア「……君は信用に足る人物だ。少なくとも僕はそう感じた」

ヒクサー「それは嬉しいな、出来れば信頼になることを望んでやまないよ」

ティエリア「この戦いを切り抜け、ガンダムを駆る不埒者を断罪したら考えよう……ッ!」

ヒクサー「それは夢のある話だ……!!」

 GNキャノンのロングキャノンが、強大な粒子を蓄えたまま森林に狙いを定める
 【ビーム兵器の複数砲身を同軸同時射撃した場合、威力は倍増する】という理論に基づいた、四門のロングキャノン
 二門の高出力ビームキャノンと化したそれは、夜の離島を貫く一条の光の柱を放ち、辺りを紅に染めていく

ヒクサー「見えたッ!」

 正確な射撃に炙り出されたOガンダムが空に飛び上がる
 その瞬間を見逃さず、弾頭を変えたリボルバーバズーカが立て続けに発射されていった
 一発、二発と炸裂し、数十・数百の散弾が吹き付けられるように散らばっていく
 Oガンダムはとっさにカメラアイを両腕で覆い隠すも、両手のビームガンはそうもいかず
 合計数千もの顆粒を浴びせられ、ビームガンは粒子を噴き上げながら炎上を始めた

ヒクサー「まだだ!」

 サダルスードは両肩のセンサーシールドを使い一気に飛翔、ビームサーベルを抜き放ち肉迫する
 Oガンダムもまた爆発寸前のビームガンを投げ捨て、サーベルを抜き迎え撃った
 赤と紅の刃がぶつかり、まるで極小の太陽のように光が暗い海を照らしあげる
 改良機サダルスードtypeFの推力に勝るとも劣らぬOガンダムの勢い、二機は刃を挟み拮抗していた

ヒクサー「……やはり、この脳波は……ニュータイプ」

ヒクサー「このパイロットは、ニュータイプだ!」

ティエリア「ヒクサー、何をする気だ!?」

 ヒクサーは躊躇無く接触回線を開き、Oガンダムとの対話を試みる
 無論GNキャノンとの回線は開いたまま、これならばティエリアにも話は聞こえる上、通信にも加われる
 もし彼が怪しむようなら撃てばいい。そう思えるほどに、ヒクサーはティエリアを信頼していたのだった

ヒクサー「Oガンダムのパイロット、此方は君が戦っているガンダムのパイロットだ!」

『!』

ヒクサー「君に問う! その機体、ガンダムの意味を君は理解しているのか! そして、僕達の存在意義も!」

 脳波の乱れが感じられる。動揺している証しだ
 この混乱に乗じれば、何かが聞けるかもしれない
 そのまま言葉を続けた

ヒクサー「もし君が何も知らないなら、僕は話をする用意がある!」

ヒクサー「だから剣を収めてほしい! 僕もそうしよう!」

ティエリア「…………!」

『話……存在意義……?』

ヒクサー(かかった!?)

 声は若い男の声、それもかなり若い
 脳波の乱れは更に強くヒクサーに響き、言葉が彼の精神に強く働きかけていることが分かった
 このままなら行ける、そう確信した瞬間

 それは、ヒクサーの心に【観せた】

ヒクサー「ッ!?」

『理由ならよく知っている……存在意義など一つで構わない』

『お前達は空を落とす……僕の敵だぁぁぁぁぁッ!!』

ヒクサー「ぐぁっ?!」

 Oガンダムの前蹴りがサダルスードの腹部を捉え、打撃を見舞いながら距離を離す
 激しい衝撃がヒクサーの意識を乱し、何重もの映像を網膜が映す
 襲い来る吐き気に耐えながら、歪む光景を必死で見つめるヒクサー
 そこには、粒子ビームをかいくぐり二刀流でサダルスードに猛進する、Oガンダムがいた

ヒクサー「ッ……!!」

『ははははははっ! 死ねぇぇえ!!』

ティエリア「ヒクサーーー!!」

 交差しながら振るわれたビームサーベルを、片方はサーベル、片方はGNフィールドが受け止める
 更に、突き出した脚でOガンダムの下腹部目掛け突き出し、カウンター気味に叩きこみ距離を即座に離した

『がぁッ……!』

ヒクサー「お返し……だ……!」

ティエリア「その隙をッ!!」

『ッ?!』

 揺らぎながら宙に飛ぶOガンダムに、再び粒子ビームが撃ち込まれていく
 超人的な反射でOガンダムは体勢を立て直すが、左腕に一撃をまともに受け、二の腕の中ほどからへし折れてしまう

『しまった……まだ反応速度が足らないって言うのか!』

ヒクサー「さあ、まだやるかいニュータイプ」

ヒクサー「悪いけど、一度差し伸べた手を払われて優しくできるほど、僕は人間が出来てないよ……?」

『ぐっ……!』

 リボルバーバズーカとGNロングキャノンを向けられ、硬直するOガンダム
 元より二対一、しかも相手は歴戦のガンダムマイスターである
 しばらく睨み合い、やがてOガンダムは高度をゆっくりと上げ始めた

ティエリア「逃がすか!」

ヒクサー「待つんだティエリア、これ以上コンテナを放置しちゃいけない!」

ヒクサー「逃げてくれるなら好都合だ……見逃そう」

ティエリア「くぅっ!」

『お前達は……地球の敵……何億もの人間を殺す……っ』

『この……悪魔め……!!』

ヒクサー「悪魔……?」

 そして、機体を翻し一気に距離を離すOガンダム
 コンテナが飛行した座標とは反対方向、恐らく追尾はしてこないだろう
 後には元の静かな海と、取り残されたMSだけが佇んでいた

ティエリア「……空を落とす、と言っていたな」

ヒクサー「何のことか分かるか、ヒクサー・フェルミ」

ヒクサー「さっぱりだね。もしかしたら、以前フォン・スパークが提唱した地球への隕石落としがそれに当たるのかもしれないけれど」

ティエリア「なら人違いで私達は狙われたのか?」

ヒクサー「どうかな、この場所が割れていたってことは、突入を見られていたか、情報が漏れているかの二択しかない」

ティエリア「もし情報が漏れていたら、全ては水泡に帰すことになるが」

ヒクサー「わざわざ疑似太陽炉搭載型の、しかも【節々を改良した】Oガンダムまで駆り出す相手だ、その可能性があるならOガンダム単騎で向かわせはしないだろうけどね」

ティエリア「楽観的だな」

ヒクサー「希望に前向きなんだよ、ティエリア」

ヒクサー「さあ行こうか、今からならまだ余裕をもって追いつける」

ティエリア「あぁ、分かっている」

ヒクサー「座標は此処だ。フェレシュテも待機してくれているはずだ、急ごう」

ティエリア「……確認した。ティエリア・アーデ、GNキャノン。目的地に向け飛翔する」

ヒクサー「…………」

ヒクサー(あの光景……円柱状の巨大構造物が街に落下し、全てを飲み込んでいく映像)

ヒクサー(作り物にしては妙に生々しいものだった。まるで自分自身の記憶を見せられているかのような……)

ヒクサー(……考えすぎるのは止そう。今は彼等を送り届け、支援することから始めなければ)

ティエリア「ヒクサー・フェルミ」

ヒクサー「! なんだいティエリア」

ティエリア「大事はないか? その、先ほどの戦闘で怪我をしたりは」

ヒクサー「? 特にはないかな」

ティエリア「そうか……ならいい」

ヒクサー「ふふ、相変わらず君は優しいね、ティエリア」

ティエリア「か、からかうなっ!」

ヒクサー「はいはい、じゃ、行こうか」

ティエリア「ぬう……」


 ・

 ・

 ・

――輸送機・格納庫――

 暗い――夜の闇をそのまま引き込んだかのような黒に塗りつぶされた、格納庫の内部
 そこには大柄な男が二人、通信機を音声のみで作動させ突っ立っていた
 
ヤザン「……仕上げるのに随分と時間がかかったじゃねえか、あぁ?」

「…………」

 右に立つ金髪の男……ヤザン・ゲーブルは、隣の男を睨みつけ喧嘩腰で言葉を投げつけた
 対して、もう一人の男……赤毛で中性的な面もちの青年は、どこ吹く風といった表情で手元のコンソールを叩いている
 険悪な雰囲気であることは違いないのだが、とどのつまり、どこか煮え切らない空気なのだ

「勘違いは困る。我々の仕事はこれを国連軍から受け取り、迅速に送り届けることだけだ」

ヤザン「だぁからよぉ! 基地が丸々吹っ飛ばされてからじゃ、迅速も何もあったもんじゃねーっつってんだよッ!」

『それくらいにしてやりなヤザン』

ヤザン「プルツー……」

『このMSの改良自体は完全に国連に任せてたんだ、こいつらの責任じゃあない』

『だが事に気付くのが遅かったのは認めるよ……悪かった』

ヤザン「……けっ、謝られたって負けは負けだぜ」

ヤザン「第一、お前が謝る理由が……」

「照明を点ける。確認をしてくれ」

 青年の言葉から数拍間を置いて、闇を切り裂き天から光が差し込んだ
 ライトアップされたのは深緑の装甲に身を包んだ国連軍最新鋭MS・GN―X
しかし、その外装は通常の機体とはかけ離れたモノに変わっていた

ヤザン「ほぉ……!」

「GN―X・アドヴァンスドtypeヤザン・ゲーブル仕様」

「機体各部のバーニア出力を強化し、脚部にバーニアを追加」

「現在ハードポイントには開発中の試作型、四連GNバルカンと複合したGNランスを基本装備として搭載」

「他にはビームサーベル銃剣を装着したGNビームライフル、希望していた大型GNビームソード、諸々のオプションを準備してある」

『本来ならもっと後になるはずのカスタムメイドGN―Xを、無理言って造らせたんだ』

『まだGN―Xのノウハウも掴めちゃいない連中にこれだけの情報提供、リジェネ・レジェッタを説得するあたしの身にもなってくれ』

『で、感想は?』

ヤザン「最高だぜ、プルツー」

ヤザン「これなら新型の鼻も明かせるってもんだ!」

『そりゃあよかった』

『戦果を期待してるよ、ライセンサー』

「…………」

ヤザン「んん?」

 ヤザンの視線が、自身の専用機からゆっくりと左にずれていく
 大型アンテナを搭載し通信機能を増強、各種武装を追加しつつ基本性能を全て底上げしたエースパイロット専用GN―X
 それがこの格納庫には【二機】、存在していたからだ

ヤザン「コイツは何だ? サーシェスのか、それともお前等のか?」

「今はまだ我々が出る幕ではない」

『なに、少し発破をかけてやろうと思ってね。こいつはその代金代わりさ』

ヤザン「代金?」

『こっちの方はリボンズを言いくるめるのに苦労したんだ』

『まあ、見てなよ。とても愉快なことさ』

 ヤザンには、彼女が悪戯を画策し喜ぶ幼子のように感じられた
 声はいつものように、上から見下ろすような尊大な調子を崩してはいない
 だが、もしこれを悪戯とするならば、それを仕掛けられる相手は彼女より絶対的に立場の弱い人間なのだろうと、おおよそ理解は出来た

ヤザン「……まぁた何か良からぬことを企んでやがるな、お前」

『かもね』

『それより、【追い込み】はしっかりな』

ヤザン「俺ぁ軍人だ。任務はこなすぜ」

ヤザン「それ以外のことは此方の都合でやらせてもらうが、な」

『あぁ、それでいい』

ヤザン「ふふ……次の戦いはいつになる? 明日か、それとも一週間後か……待ちきれんなぁ」

 命のやりとりの場を、指折り数えて待ち望むヤザン
 青年は、首筋を冷たい何かが伝うのを確かに感じていた
 目の前の男が、人のようで違う、一種理を外れた野獣のように感じられた、恐らくはそのせいなのだろう

 ・

 ・

 ・

『不機嫌そうじゃないか、デヴァイン・ノヴァ』

デヴァイン「……彼が人間の枠を超えた、有能な戦士であることは認めよう」

デヴァイン「だが我々イノベイターが、わざわざ人間のご機嫌取りに駆り出される……気分の良いものではない」

『他に回せる人員がいなかった、というのは言い訳だね』

『今回の一件でリボンズは疑心暗鬼になってる、ヴェーダを攪乱されて情報を鵜呑みに出来なくなってるからさ』

『おまけにサーシェスの【仕事】が捗っていない。監視者の中にも、奴らと繋がっていた連中がいるってことだ』

デヴァイン「だから我々が動かざるを得ない、と?」

『最近地球でも正体不明のガンダムタイプが確認されている』

デヴァイン「例のOガンダムの……?」

『あぁ。あたしもしばらくは火消しに回らなきゃならない』

『こういった野暮用一つでも、少なからず信じられる人員を動かしたいんだろ。良かったじゃないか、アイツが他人を信用するなんて珍しいことだよ』

デヴァイン「むしろ、我々イノベイターに君ほどの信頼が向けられていない事実こそが私には重い」

『買いかぶりすぎだよ。計画の前ではお前らもあたしも、歯車の一つでしかない』

デヴァイン「…………」

『ふふ、信じられないかい? すぐに信じられるようにしてやるよ』

デヴァイン「……先ほども言っていたな。何をするつもりだ?」

『なに……迎えに行くだけさ』

『妹を、ね』


――翌日・司令室(臨時)――

マネキン「貴公等が今回の臨時便に同乗した補充要員か」

ジニン「はっ! バラック・ジニン少尉他五名、本日を以てグッドマン司令及びマネキン大佐の指揮下に転属致します」

マネキン「ご苦労だった。道中の疲れをゆっくり癒してくれ……と言いたいところだが、状況も状況だ」

ジニン「理解しております。先の戦闘で散った戦友達の名に恥じぬよう、我等六名、身命を賭して任務に当たる所存であります」

マネキン「うむ、戦果を期待させてもらおう」

PPP

マネキン「失礼……私だ」

マリーダ『職務中失礼致します。セルゲイ・スミルノフ大佐指揮下の哨戒部隊が、先ほどポイントC767にて未確認のMS部隊と交戦状態に入りました』

ジニン「未確認!? まさか例の……!」

マネキン「……どうだ、マリーダ」

マリーダ『スミルノフ大佐の連絡によれば、フラッグ1、イナクト2、陸戦型ヘリオン4』

マリーダ『ポイントC767の地形では、恐らく奇襲や待ち伏せの可能性は低いかと』

マネキン(斥候にしては数が多い……部隊の移動中に哨戒部隊に接触したか)

マネキン「大佐ならば問題もなかろう。経過は逐一報告を」

マリーダ『了解、失礼致します』

マネキン「待て、マリーダ」

マリーダ『はっ』

マネキン「グラハムは今、臨時便の方か?」

マリーダ『はい、マスターならば恐らく、ダリル少尉とフェルト・グレイスの搭乗に立ち会っているはずです』

マネキン「そうか」

ジニン(マスター……!?)

部下A(マスター……?)

部下B(マスター……)

部下C(マスター……!)

マネキン「……例の一件に関しては、何か言っていたか」

マリーダ『いえ、一言も……』

マネキン「そうか……分かった、もういい」

マリーダ『失礼致します』

マネキン「…………」

マネキン「!」

マネキン「いや、済まない。余計な間を挟んでしまったな、少尉」

ジニン「いえ、指揮官が状況を把握するのは当然であります」

ジニン「ときに……先ほどの女性は、マリーダ・クルス中尉でありますか?」

マネキン「知っているのか」

ジニン「はっ、優秀なニュータイプ兵士である、という程度ではありますが」

ジニン「となれば、マスターはあのマスター・グラハム……」

マネキン「そうなるな」

ジニン「…………」

マネキン「…………」

ジニン「うら若き乙女にマスターと呼ばせるのは、その、趣味、でありますか?」

マネキン「……明言は控えさせてもらおう……」


――緊急便――

兵士「揺らすなよ、麻酔は効いてるが重傷だからな」

兵士「せー……のッ!」

兵士「……ふーっ……」

 集中治療カプセルに入れられたまま、ダリル少尉が輸送機に運ばれていく
 ジョシュア、タケイ、リディ……遠目ながら、やはり見送る者達は多かった
 カプセルに向け敬礼をすると、何も言わず隊員達は持ち場に戻っていく
 その表情は険しく、無言の中に無念が見えるようであった

兵士「よーし、良いぞ」

医師「医務室に運んでくれ、経過は私が見よう」

兵士「了解致しました」

 手続きを手短かに済ませると、軍医が荷物を重たげに担ぎ上げる
 傍らにはグラハムが、消えぬ隈を目元に残し立っていた

グラハム「ダリルを宜しくお願いします、先生」

医師「……グラハム少佐、ガンダムの件は……」

グラハム「……意識が戻り次第、経過を見てお伝えしていただきたい」

グラハム「出来れば、ダリルが起きる前に我々が証明してやりたいのですが……それも叶いますまい」

医師「心中お察しするよ、少佐」

グラハム「軍人なぞこんなものです」

グラハム「それと彼女の身柄も……」

ミーナ「ごめんなさ~い! 待たせちゃった!?」

医師「!」

 声を張り上げ、大きなキャリーバッグを引いてきたのは、何時もの白衣に身を包んだミーナ・カーマイン
 目元の化粧がいつもより濃いのは、恐らく見間違いではないのだと軍医は理解した
 そんな、気丈に振る舞う彼女の後ろから、最後の搭乗者であるフェルト・グレイスが付いて来る
 俯き、泣き腫らした目を隠すように、手提げ鞄を抱きしめて
 ミーナに比べるとかなりの時間を要しながら、輸送機の搭乗口に到着した

兵士「これで臨時便の搭乗者は最後ですか?」

グラハム「あぁ、出発の準備をしてくれ」

フェルト「…………」

グラハム「……短い間だったが、君と共にいた時間はかけがえのないものだった」

フェルト「っ……」

ミーナ「大丈夫よフェルト。こっちで戦いが終わってから、また連絡すれば……」

フェルト「終わるんです、か?」

ミーナ「え……」

フェルト「相手……ガンダムなんですよね……本当に、この戦い終わるんですか……?」

グラハム「……」

フェルト「ダリル少尉は大怪我で済んだけど、グラハムさん、またガンダムと闘うんですよね……?」

フェルト「また……逢えるんですか……? 生きて、逢えるんですか……!?」

 フェルトの問いに、三人は答えられなかった
 グラハムは無言のまま立ち尽くし、軍医は眼鏡の位置を直すも言葉を発せず
 ミーナは、無理に作っていた笑顔が、今にも崩れそうになっていて
 フェルトは、悟ってしまった
 グラハム達が、ガンダムの手により死ぬかもしれない、という事実を
 それが、この世界では当たり前なのだと

医師「フェルト君、軍人というものはだね……」

フェルト「嫌です……やっぱりイヤ!」

グラハム「!」

フェルト「帰りたくない、逃げたくないっ!! 死んじゃうかも知れないのに、グラハムさんもマリーダさんも、死んじゃうかも知れないのにっ!」

フェルト「私だけ逃げるなんて、そんなのイヤッ!!」

ミーナ「フ、フェルト、落ち着いて……ねっ」

フェルト「お願いです! 私を此処に置いてください!」

ミーナ「リーサとの約束が……!」

フェルト「知らないっ! 関係ないっ!」

フェルト「また……家族が死んじゃうなんて……見てるだけなんてっ……!」

兵士「しょ、少佐」

グラハム「黙っていろ」

フェルト「グラハムさんっ! 私、ガンダムのパイロットと話します! そうすれば、もしかしたらっ!」

 瞬間、乾いた音が響き渡る
 落涙を拭おうともせず、半狂乱のまま行われた少女の嘆願を止めたのは、一発の平手打ちだった

ミーナ「……いい加減にして……!」

フェルト「え……っ」

 グラハムに詰め寄った肩を引き剥がし、ミーナの渾身の右がフェルトを強かに打ち据えたのだ
 何が起きているのか分からない、そんな表情でフェルトは膝を折る
 今まで一切無かった暴力に、気力も一瞬吹き飛ばされ、フェルトは時が止まったかのように動かなくなる
 グラハムは何もいわず、兵士に手掌で合図を送った

グラハム「…………」

兵士「え? あ……はい!」

医師「……後のことは、引き受けたよ」

グラハム「頼みます」

医師「気にすることはない、大人の役割などこんなものさ」

 グラハムの促すままに、医師と兵士はフェルトを立たせそのまま輸送機に連れ込んでいく
  後に残されたのは息も絶え絶えのミーナと、輸送機に背を向けるグラハムのみ

 やがて輸送機が離陸準備に入り、護衛のリアルドが滑走路を走り出す
 耐えかねたように、ミーナが口を開いた

ミーナ「大人って汚いわね……あの子の言い分なんか全部無視して、最後は暴力よ……」

ミーナ「叩いて混乱させたまま輸送機に放り込ませて……あたし、自分が自分で信じらんない」

グラハム「……リーサ・クジョウとの契約以前に、基地が主戦場になった時点で彼女は安全な場所に移さねばならなかった」

グラハム「君は正しかった。君が打っていなければ、私がそうしていた」

ミーナ「三日三晩説得して最後は平手打ち……か」

ミーナ「正しさって、何なのかしらね」

グラハム「明確な基準があれば、戦争など起こりはしないさ」

グラハム「だがあれだけ抵抗して見せたと言うことは、それだけ彼女が何か大きなものを背負っていたという証拠か……」

ミーナ「……またって……あの子、そう言ってたわ」

ミーナ「……調査するの? フェルトとリーサを」

グラハム「まさか」

グラハム「私は彼女と接するときは、一人の男として、友人として接すると決めている」

グラハム「たとえ彼女の素性がどうあれ、今更何かを追求するつもりはないよ」

ミーナ「……そっか」

グラハム「軍人失格だな、私は」

ミーナ「そうね、でも嫌いじゃないわ。そういうの」

ミーナ「ありがとうグラハム」

グラハム「礼には及ばん。あくまで私個人の意向だ」

グラハム「さて……次はカタギリの説得だな。気が重い」

ミーナ「手伝えることがあるなら、いつでもどうぞ」

グラハム「その好意に感謝しよう」

 やがて輸送機の影は高々と空へ舞い上がる
 巻き起こる風が責めるように二人の背中へと吹き付けられた
 それに後押しされるかのように歩を進める二人
 堪えきったのだろうか、はたまた堪えきれなかったのだろうか
 グラハムの隣からは、嗚咽交じりの呼吸が聞こえ始めていた
 施設内に着くまで数百メートル、グラハムが彼女の方を向くことは終ぞなかった


――秘密基地――

 煌々と辺りを照らす、大型の照明器具
 その下ではMSが次々と運ばれ、巨大な鉄の筒へと呑み込まれていくのが見える
 一体、これほどの電力を何処から供給しているのか
 それを知った今では、疑問は別の方面へと向けられていた

刹那「…………」

「新入り、交代だ! 休んで良いぞ!」

刹那「あ、はい! ありがとうございまぁす!」

 現場監督らしき男の声と共に、本日の仕事は終了を迎えた
 この後は配給の食事を済ませ、決められた湯量の入浴をし、各々に与えられた寝床で眠るだけである
 今日は高所での溶接作業、昨日はMSの整備と運搬、恐らく明日は積み込み作業の増員に加わることになるだろう
 マイスターとして培った様々な技術が活き、加入して間もないにも関わらず地下基地での作業従事が認められていた

刹那(だが、かえって厄介なことになったかもしれない)

刹那(巨大テロ組織の内情を調査し、その内容次第では国連軍にリークも考えていたが……)

刹那(地下基地そのものは、先進国家クラスの技術に加え、相応の警備体制が敷かれている)

刹那(【計画】が此処まで進行してしまった時点では、もはやリークなど無意味か……)

 この基地のことを知ったのは、とある偶然の出来事によるものであった

 ――20年以上も前、ユニオン主導の初期開拓政策により、数多の人種が宇宙へと運ばれていった
 そんな宇宙に進出した者達が苦心して造り出し、安定運用に成功した数少ないコロニーの一つ、【シャングリラ】
 結果としてユニオンら三国の恥部となり、太陽光紛争の引き金ともなったこの初期コロニーは、今では委託を受けた民間企業の管理下に置かれていた
 廃材やMSの残骸が多数転がる宇宙のゴミ溜め、管理体制も杜撰なその場所に潜り込むのは、ガンダムマイスターであれば容易なものであった
 異常現象を引き起こしたカスタムフラッグⅡに破壊され、機能の大半を停止していたガンダムエクシア
 その修繕と応急処置に使えそうなパーツを探しているとき、彼等に出逢ったのだった

刹那(そうだ……俺はMSの残骸の山の中で、【袖付き】に接触した)

 ――【袖付き】
 200年も昔のジオニズムを掲げ、反体制反国連を謳い活動を表面化させたテロ組織
 その活動はあまりにも膨大かつ正確な情報に支えられ、テロ組織でありながら独自開発の疑似太陽炉搭載型MSさえ所持している
 しかも、まるで何百年も周到に準備を重ねたかのように、既に彼等は宇宙コロニー間の組織ネットワークと多数の次世代型基地施設を保有していたのだ

 まるで、【ソレスタルビーイング】のように――

刹那(…………)

 其処から、【袖付き】傘下のテロ組織に入り、予め決められていたルートから地上に降下
 密航に密航を重ね、漸くこの地下基地へと辿り着いたのだ 彼等が行おうとしていること、その真意は分からない
 だからこそ知らなければならない。場合によっては、破壊せねばならないだろう
 それがソレスタルビーイング、世界への反逆者の役割なのだから

刹那(エクシアは、ガンダムマイスターの危機回避プログラムに従い隕石に偽装した小型格納庫に保管してある)

刹那(何億ものデブリの中にある数千の隠れ蓑……その中の一つ。恐らくは安全だ)

刹那(エクシア……俺のガンダム。今はゆっくり休んでいてくれ)

刹那(俺は世界を、俺達が起こした変革の結末を見極める……!)

 兵士の哨戒ルートは既に調査してある。監視カメラの向きやその死角も調査済みだ
 物資や廃材で入り組んだ廊下を抜け、プチモビの隙間を縫い、ミドルMSの下をくぐる
 十数分後、目的の場所に到着する
 そこには大人一人通れるか否かというサイズの通風孔が、口を開けて待っていた
 刹那の体躯ならば易々と潜り込める。小さな身体が潜入という条件にはこの上なく合致していた
 目当ての部屋はすぐ側にある。全てを明らかにするため、刹那は再び闇へと飛び込んだ

――――

 通風孔を辿り、目的地のすぐ真上に刹那は到着する
 見える範囲では、部屋は大きな正方形の机を中心に据え、巨大なモニターが壁の一面を占めているようであった
 残念ながら角度のせいかモニターは端かどしか見えず、何が映っているかは殆ど見えない
 しかし、その音声だけは、五月蝿い位に響き渡ってきた

ジンネマン「連れてきました、大佐。例のガンダムのパイロットです」

『御苦労だった、キャプテン。先の三点同時強襲も我が軍の圧勝と聞く』

『話し合いの席を持つ前に、まず感謝の意を述べさせてくれ。君には苦労をかけさせるが、いずれ功労に見合うだけの見返りは与えるつもりだ』

ジンネマン「ありがとうございます、大佐」

『では、はじめまして、ガンダムマイスターフォン・スパーク』

『私が【袖付き】の首魁……今は、フル・フロンタル大佐と名乗らせてもらっている』

刹那(くっ……顔は見えないか)

フォン「テロリスト共の親玉に名前を知られているとは、恐悦至極」

ジンネマン「……おい!」

フロンタル『キャプテン、構わんよ』

ジンネマン「しかし……」

フロンタル『見た限り、彼はそういう人間だ。ならば止めるだけ無駄な話だよ』

874『フォン、痛烈に皮肉られていますが』

フォン「アー、アー、聞こえねえ」

フォン「能書きは良いから、さっさと本題に入ってくれ。ガンダムマイスターは忙しいんだ、あんたと違ってな」

ジンネマン「この野郎言わせとけば……!」

フロンタル『構わないといった、キャプテン』

ジンネマン「ぐっ……」

フォン「あげゃげゃ」

 椅子に深々と背を預け、机に足を投げ出す金髪紅眼の青年
 刹那は彼に見覚えなど無かったものの、彼が搭乗していたガンダムには見覚えがあった
 第二世代ガンダムの一号機、エクシアの前身にして第三世代ガンダムの根幹ともいえる、正義の女神名を冠するガンダム【アストレア】だ
 加えて使われているのはオリジナルの太陽炉、認めたくなくともあのガンダムが本物であることは疑いようがなかった

フロンタル『ふふ、データベース通りだな。傲岸不遜、しかしながら腕前は超一流……その態度は自身の能力への揺るぎない自負からか?』

フォン「悪いか? 自分が何もかもを知り、何もかもを成せると信じるのは」

フロンタル『少なからず君の中ではそうなのだろう? ならそれを否定はしないさ』

フロンタル『我々は我々の中で下した評価に基づき、君と手を結ぶだけだ』

874『フォン、完全に煽られてます』

フォン「……あげゃ」

刹那(ガンダムマイスターが【袖付き】と手を結ぶ……だと?)

刹那(……ッ……!!)

 腹の底から煮えたぎった何かが湧き上がってくるのを、刹那は感じていた
 ロックオンは命を賭け、最後まで世界を変えようと抗い続けた
 あのティエリアが、ロックオンの為に、と言ったときの自身の感動は、これからも忘れることは無いだろう
 ヨハン・トリニティは重症だったが、生還できたのだろうか?
 あの時その場にいなかったアレルヤの安否も、一日とて気にならなかった日はなかった

 テロリストとして自我の無い人生を生きてきた今の刹那を形作っていたのは、ソレスタルビーイングの仲間達との日々
 たったの一年足らずではあったが、かけがえのない日々の記憶であった
 それらを無碍にするような行い、それが刹那の逆鱗に触れていた

刹那(貴様がガンダムマイスターであるかはどうでもいい……)

刹那(だが貴様がガンダムを駆り、世界に混乱と戦争をもたらすというのなら)

刹那(俺達が、ガンダムマイスター達が為してきたことを否定すると言うのなら!)

刹那(俺は必ず貴様に対し介入する……ガンダムとして!!)

フロンタル『さて、話を戻そうか』

 込み上げる怒りを抑え、刹那は耳を澄ませ携帯端末を取り出す
 見た目はありふれた今どきの携帯だが、中身はイアン謹製の魔改造品である
 その多機能さは小型のHAROと呼べるほどであり、ガンダムマイスターが潜入時に必要とするあらゆるものを備えている
 その内、カメラによる撮影機能と集音・録音機能を使い、刹那は状況を記録することにした
 万が一に備え、【証拠】となるものを集める為に、だ

874『……フォン』

フォン「構うな。好きにさせろ」

フォン「むしろこっちの手間が省ける……お手並み拝見といこうじゃねえか」

874『了解しました』

ネフェル「?」

フロンタル『……君のお陰で厄介な小バエを落とすことには成功できた、そのことには感謝しよう』

フォン「あんたがすべきなのは俺への感謝じゃなく、疑似太陽炉搭載型MSを使いながら旧型すら落とせない部下への叱責だな」

フロンタル『勿論既に済んでいる。身内への愚痴を他人に向けて言うほど、私は恥知らずではないつもりだ』

フォン「へっ、それで? 【発射】は何時になる予定だ」

フロンタル『稼いでくれた時間をフルに活用して一週間、といったところか』

フォン「随分とのんびりなことで」

フロンタル『慎重だと言って欲しいものだ』

クラウス「…………」

クラウス(同じ手は二度も使えない。逸ってミスをすれば、逆に一網打尽になるのは此方の方だ)

クラウス(それを理解しているのだろう、大佐の念の入りようには恐れ入る)

ジンネマン(只でさえ開発途上だった【シャンブロ】は、GNメガカノン発射後に各部で小規模の爆発さえ起こしたと聞く)

ジンネマン(地球に残って任務を継続するマッドアングラー隊への最大限の補給、相手の目を引っ張れるだけ引っ張る役割、意味はあるってこった)

ネフェル(何で大佐は仮面してるんだろうね……ファッション?)

フロンタル『フォン・スパーク』

フォン「あげゃ?」

フロンタル『君は我々に所在不明のGN―Xを三機譲渡し、その見返りに我々の【計画】への参加を要求してきた』

フロンタル『だが我々に対し何か明確な要求をするわけでもなく、かといって組織での地位を求めても来ない』

フォン「……何が言いたい」

フロンタル『腹を割って話して貰いたい、ただそれだけだよ』

フロンタル『我々はお互いを警戒し探り合っている、だが君の目的如何によっては、【袖付き】は君を強くバックアップする用意がある』

フォン「はっ、今更懐柔するつもりか?」

フロンタル『勿論、君の行動を阻害するような真似はすまい。君の目的が我々に対する妨害なら、わざわざ回りくどいやり方をせずに叩けば良いのだ』

フロンタル『それに、これはあくまでビジネスの話になるが……私は君のくれたモノがチケット代に見合うものとは考えていない』

フォン「!」

刹那(!)

 大佐がそう告げたと同時に、部屋には数名の武装した兵士が入ってくる
 突入、と呼べるほど仰々しいものではなかった
 殺意の薄さ、そして袖付き側の重要人物の表情から、警告とさえ呼べない、大佐の不快感のようなものを表すものだと刹那は考えた
 言うなればお互いの立場をはっきりしたい、意思表示に近いものなのだろう
 それを理解しているのか、フォン・スパークの態度は相変わらずふてぶてしいものであった

フォン「……てめぇ」

フロンタル『君が求めて来たのは対等な交渉だ。我々にも危害が及ぶ以上、勿論君にも相応の手札は見せて貰わねば話にならない』

フロンタル『勿論、今そこで君に暴れられでもすれば、我々は甚大な被害を被るだろう』

フロンタル『だがそれは君が宇宙に上がれなくなることに繋がり、そのことで利益を得るのは我々と君の共通の敵だけだ』

刹那(共通の敵……国連軍か?)

フロンタル『君は負けることを嫌う男ではない。しかし同じ土俵に上がることすら出来ぬままでは、それは敗北にすら届かぬ凋落だよ』

フロンタル『それが分からぬ君ではないと、私は思っているのだが……』

フォン「ふん、どうだかな? こちとら手の打ちようは幾らでも……」

フロンタル『我々は【箱】の情報も手にしている、と言ったら?』

フォン「……!」

刹那(?)

フロンタル『やはり、そうか。どこで知ったのかは知らないが、ますます君に興味が湧いてきた』

フォン「そんな餌に俺が……」

フロンタル『釣られてくれると思ったからこそ、さ』

フォン「嘘かもしれねぇ」

フロンタル『もしそうだったなら、いつでも牙を剥いてくれて構わない』

フォン「あげゃげゃげゃ! 俺の牙は鋭いぜ?」

フロンタル『手を咬まれる覚悟も無くて、【袖付き】を率いることなど出来はせん』

 再び、静寂が会議室を包み込む
 モニターの大佐を睨みつけるフォン・スパークの表情は、何処となく嬉しそうに見えた
 恐らく大佐とやらも笑みを浮かべて向かい合っているのだろう
 先ほどのやり取りが嘘のような、それでいて緊張の糸だけはそのままに、はりつめた空気が部屋の隅々にまで広がっていた

刹那(仲違いか……それとも……)

 他の幹部達も固唾を呑んで成り行きを見守っている
 フォン・スパークの答え一つで、ガンダムが敵にも味方にもなるのだから、当然の反応であろう
 肝心の当人はコップ一杯の水を飲み干し、満足げに息を吐いている
 闘うためだけに存在する男、そう説明されれば信じ込めると、刹那は思った

フォン「…………」

フロンタル『…………』

874『……! フォン』

フォン「来たか」

874『はい』

 相槌程度の短いやり取りの直後、基地の警報がけたたましく鳴り響く
 未だ余韻に酔いしれた基地全体を覚醒させるには、十分過ぎるほどの衝撃
 部屋の中にいた人間は皆、一様に天井を見上げた

ジンネマン「敵襲か……!」

クラウス「しかもこの音、第一戦闘配備!?」

フォン「874」

874「モビルスーツ三個小隊が此方に接近……全機GN―Xtypeです」

フォン「世界を牛耳ってる野郎の差し金か。上等!」

 基地内は瞬く間に騒然となり、兵士達は武器を手に慌ただしく持ち場に走り出していく
 いち早く飛び出したネフェルとクラウスは、もう姿が見えないほどに遠のいていた
 部屋に残されたのはジンネマンとフォン、874HARO、そしてモニターの向こうのフロンタルだけとなっていた

ジンネマン「……大佐、私も迎撃に向かいます」

フロンタル『任せる。私がその場にいれば最良なのだが、仮定の話をしても仕方あるまい』

フォン「……」

フロンタル『もっとも、私の代わりとして成り立つだけの能力がある者はいるようだが』

フォン「うぜぇ。遠回しに言ってくるんじゃねえよ」

フロンタル『ならば単刀直入に言えばいいか? 私のような人種から命令されることを一番嫌う類の人間だと思っていたがな、君は』

フォン「生憎、決めつけられるのと分析されるのも大嫌いだ」

フロンタル『ならば……自主的な行動に期待するとしよう』

フォン「チッ、狸が」

 最後にフォン・スパークが立ち上がる
 それに追随し、874と呼ばれたHAROが立体映像を解除して転がっていく

刹那(……)

フォン「……へっ」

刹那(?!)

 一瞬、だがしかし、確かに視線が交わった
 フォンは明らかに通気口の刹那の方を見て、小さく、はっきりと笑みを浮かべたのだ
 とっさに身を隠す刹那、しかしフォンは何もモーションをかけずにそのまま部屋を出ていってしまう
 見逃されたのだろうか、それとも仲間と勘違いされたのか?
 今の刹那に、彼の意図を読み取ることは出来なかった

刹那(ッ……とにかく、状況は完全に袖付き優位のままに進んでいる)

刹那(この基地……これほどの設備をヴェーダに悟られずに造り出すような組織、放置するわけには行かない)

刹那「当初の予定よりも作戦を繰り上げる必要があるか……」

刹那(……こんなとき、スメラギ・李・ノリエガがいればもっと別の作戦を取れた筈だが)

刹那(止そう……いない者の力を頼りにするのは)

 決意を新たに、刹那は仄暗い迷路の中を這って移動を始める
 予定よりだいぶ早い行動にはなるが、敵機の襲来した今なら恐らく基地内の警備は手薄になるに違いない
 図らずも得た絶好の機会を生かさんと、その身が汚れるのも厭わず通気口を這いずり進んでいった


To Be Continued


マリーダ「……」

 肩に重くのしかかる疲労感をそのままに、マリーダ・クルスは自室に逃げ込むように帰ってきた
 今日もまたグラハムとは会話らしい会話をしていない、それどころか、隣に立つことすらままならなかった
 仕事上の問題もある、ただ彼女にはそれ以上の壁が、彼と自分の間に立ちはだかっているように思えてならなかった
 それは、かつて自身の仲間達の命を奪い、自らに消えぬ毒と傷跡を残した存在
 そして今、彼女のかけがえのないよすがをも消し去ろうとしている存在であった

マリーダ「……ガンダム……ッ」

『成る程。お前を苦しめているのはそいつか』

マリーダ「ッ!?」

 暗闇の中から聞こえてきた、声
 マリーダはその声の主を知らなかったし、この部屋に自分以外の人間がいること自体、認知していないことであった

マリーダ「誰だ!」

『誰だ、はないだろう? 血の繋がった姉にかける言葉じゃないね』

マリーダ「姉……ッ?」

マリーダ「……まさか……!」

 ホルスターの拳銃を掴む手の力が、ゆっくりと抜けていくのが分かった
 安堵によるものではない。これは、畏怖によるものだとマリーダは知っていた
 暗闇の中から声だけが響いてきていた
 感情や脳波は一切感じられない
 そんなマリーダの様子をせせら笑う調子で、それでいて、案ずるかのように
 ただ、声だけが響いてきていた

『さ、話をしようかトゥエルヴ』

『お前のマスターの命に関わる……大事な大事なお話をねぇ?』

マリーダ「なっ……!?」



375 :>>1 ◆FnwJR8ZMh2 [saga]:2012/09/23(日) 02:25:18.78 ID:KcSu7XIAO
本日はここまで
本当にごめんなさい
だいたい流れは掴んでる筈なんだが、二期ばかり頭に浮かんでくるのが辛い
なるべく早く更新はしたい

ではまた

一応知らない人の為のフェレシュテ構成員解説


【エコ・カローレ】

第三世代ガンダムマイスター候補に挙げられていた人。つまりラッセと同じ。三十歳・男
MSパイロットとしては凄い腕前で予備マイスターとして登録されてる
じゃあ何でラッセみたいにトレミーに乗れなかったの?→アドリブ不可能な人だから
的を撃つ訓練のときに何も知らせずにMSをリモートで出すと、ただ直進してるだけのMSにさえテンパって全く当たらない
「これは模擬MSです」「あらそう」→命中、という、想定された中でしか働けない人。罠があること前提なトレミー組にいちゃいけない人
00Fではフォンに出番食われてガンダムに乗れないままだった
組織内で基本的に立場がない


【シェリリン・ハイド】

十四歳つるぺた。ウェーブがかった金髪ロングの褐色肌の女の子
モレノさんが拾ってイアンが色々教えた若きMS技師
若い頃からかなり優秀。GNアーチャーの開発者で他にも色々造っている
一期→二期で一気におっぱいがデカくなる。何があった
フェルトの親友という設定


【シャル・アクスティカ】

第二世代ガンダムマイスター。今はフェレシュテの提唱者にして指揮官
少女の頃からガンダムマイスターしてた。ガンダムプルトーネのマイスターだったが陰謀により作戦途中でGNドライブが暴走、これによりフェルトの両親が死亡する
本人も細胞異常により定期的なナノマシン投与が必須の身体になりガンダムマイスター資格も剥奪されてたりする
フェルトが赤ちゃんのときに抱っこしたりしてる
フォンに見つめられて堕ちてる


【フォン・スパーク】

本名ロバーク・スタッドJr.
フェレシュテのガンダムマイスターにしてテロリスト
宇宙労働者であった両親が事故で死亡、そのまま報復のためにテロリストとなるという太陽光紛争時のテンプレート的な生い立ちを持つ
サーシェスと元同僚。同年代の刹那と違うのは、刹那が操られた駒に対し、フォンは頭脳明晰で破滅的思想をもった、テロリスト側からしても頭のおかしい危険分子だったこと
一応このSSではネフェルさんのいう裏の部隊に当たる人物
強い。傲慢。頭いい
父親のロバーク・スタッドはフェルトの母親マレーネの命を救った人でもある。真面目な労働者だったらしい
ちなみに00F一期の時間軸では、プルツーから追っかけ回されては逃げ延びてたりする


←ブログ発展のため1クリックお願いします
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメント編集・削除に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)

    トラックバック

    この記事のトラックバックURL
    http://kannki.blog39.fc2.com/tb.php/3185-55faf1b2
    この記事へのトラックバック



    アクセスランキング ブログパーツ レンタルCGI
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
    /* AA表示 */ .aa{ font-family:"MS Pゴシック","MS PGothic","Mona","mona-gothic-jisx0208.1990-0",sans-serif; font-size:16px; line-height:18px; }