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コードギアス Knight-horse of Shinn

2009年09月14日 20:17

シンをコードギアス25話直後の世界に放り込んでみる

名前:通常の名無しさんの3倍 [2007/08/15(水) 22:32:54 ID:t0UOsn6v]

「ルナ……」

 意識を取り戻したシンが最初に見たのは、彼の大事な女性だった。

(確か、ジャスティスにデスディニーを落とされて……)

 意識をはっきりしないながらも、ルナマリアの視線の先を追う。
 メサイアが落ちるのが見えた。


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「オーブは……討たれなかったのよ」

「違う……」

 その呟きを、ルナマリアは聞き漏らしていた。
 シンは泣いていた。その涙は───己の力を、自信を、理想を、信念を、
 全てを粉々に打ち砕かれた、血の涙だった。
 両の拳を手袋を食い破らんほどに固く握りしめる。

「コアスプレンダーの通信機は生きているみたいだから、ミネルバに連絡を取って……シン?」

 ようやく、シンの様子がおかしいことに気付くルナマリア。

「『討たれなかった』じゃない……『討てなかった』んだ!」

 そう叫んで立ち上がると、シンはおぼつかない足取りで歩き出す。

「シン?! どこ行くの?」

「あいつらに降伏するなんて、真っ平御免だ!」

「もう戦いは終わったのよ!」

 腕を掴むルナマリアだったが、はね除けられる。

「君も……あいつらの肩を持つのか……」

 シンの顔に浮かんだのは、悲しみだった。

 守りたいと思った愛しい女性さえも自分を見限った。彼はそう取ったのだ。

「俺は絶対に認めない! アスランもキラもラクスもアスハも! 世界があいつらを選ぶなら───」

「シン! もうやめて!」

 怨嗟と呪詛の言葉を連ねるシンを、ルナマリアは止めようとするが、
 彼は遂に最後の一言を言ってしまう。

「壊してやる! こんな世界!!」

 刹那、シンの視界が───いや、『世界』が暗転した。

「ここは……?」

「シン……」

 名前を呼ばれて、シンが振り向くと、そこにいたのはベルリンで彼が最期を看取ったステラ・ルーシェ だった。

「ステラ!?」

「ステラは、シンに昨日をもらった。だから、シンは明日を……」

 全ての呪縛から解放され、心からの微笑みをシンに向ける。
 だが、

「……ごめん。君や家族や友達を奪った奴らと生きる明日なんて、俺はいらない。だから」

 シンが言い終わる前に、ステラは悲しそうな顔を浮かべながら遠ざかっていく。

「待ってくれ! 俺も連れてってくれ!」

 伸ばした手が彼女に届くことはなく、たった1人、何もない空間に取り残される。

『自ら蜘蛛の糸を切ったか』

「!?」

『彼女の言葉を受け入れていれば、『戻れた』ものを』

 シンに呼びかけたのは、奇抜な格好をした『少女』だった。
 淡い緑色をした長い髪。
 強い意思を感じさせる金色の瞳。
 それだけなら、遺伝子調整によって先天的に容貌のコーディネイトが可能な
 世界の住人『だった』シンが戸惑うことはなかったかもしれない。
 ところが、 彼女が着ている服が普通ではなかった。
 なんと拘束具だ。

「誰だあんたは?!」

 シンの問いには答えず、『少女』は口を動かす。

「お前は世界を拒絶した。だから世界もお前を拒絶した。最早お前は、元の世界では存在しなかったことになっているだろう」

「な、なんなんだ! それは!?」

 元の世界? 自分が拒絶したから世界も拒絶した? 自分が存在しない?
 頭が混乱する。

「分からんか?」

「当たり前だ! いきなりお前は存在しないと言われ、納得するわけないだろ!」

「元々お前は『死んでいた』のだ。『死んだ』者は成長しないし、ましてや世界を変えることなどありえん」

「なんだと!」

 存在だけでなく、歩んだ『歴史』さえも否定され、シンの目が怒りに染まる。

「お前は、自分が全く間違っていなかったと言えるのか?『敵』の全てが間違っていたと言えるのか?」

「…………」

 『少女』の言葉に、怒りと混乱で熱くなっていたシンは、稲妻に貫かれたような衝撃を受け、
 反論の言葉を失う。
 暫しの沈黙の後、シンは重い口を開いた。

「薄々気付いてたさ……デスティニープランの危険性は。けど、それで戦争がなくなるなら! 戦争のない世界以上の幸せな世界なんてない! 間違ってるとしたら、それを許さない世界の方だ!!」

「心を保つために戦うより、戦わないために心を捨てることを選ぶか。
ただの凡愚ではないようだな……だが、お前がいなくても、ユニウスセブンは
砕かれ、デストロイは街を焼き、レクイエムは放たれ、メサイアは落ちる。
流れは何一つ変わらない」

「俺のやったことは……いや、人生そのものが 全くの無駄だったというのか!?」

「その通りだ」

 一片の同情も労りもない言葉。

「…………ハハッ、アハハハハハ!」

 突如、哄笑が空間に響き渡った。

「どうした」

「お前の言う通りだ。俺は正義の味方なんかじゃない。大嫌いなあいつらを、俺の家族と同じように……いや、それ以上残酷に殺したかっただけさ。怨みと嫉妬と憎しみに凝り固まって、自分から選択肢を消したんだ」

「自分の欲求と傲慢と狂気を認めたか」

 年格好に似合わない、まるで長い年月と経験を積んだ老人のような
 『少女』の口調。彼女はシンに一つの提案を出すことにした。

「お前、もう一度『生きる』気はあるか?」

「?」

 咄嗟に意味が理解できない。チャンスを与えられるようだが、『少女』の
 話からだと元の世界にはもう戻れないはずだ。

「別の時間、別の歴史、別の理の中を、お前を知る者も頼る術もなく、生きゆかねばならない。それでも『生きていく』覚悟はあるか?」
 金色の瞳が、瞬きをせずに赤い瞳を見つめる。
 彼女の提案を受け入れるということは、両親や妹を失った時の非ではない孤独が待っているというこ と。
 だが、シンの『覚悟』は決まっていた。

「…………ああ、俺は『生きる』。『生き抜いて』やる! 世界が俺を拒むなら……俺が世界をぶち壊す!!」

 その言葉を聞いた『少女』の顔が、微かに和らぐ。

「ならば来い! 我々の『契約者』が、お前を待っている」

 救難信号をキャッチした母艦から、通信が入る。

『ルナマリア、無事か?』

「副長! シンがっ!」

『シン? 一体誰のことだ? うちのクルーにそんな奴いたっけ?』

「……あれ? そういえば、そうだったわね……でも……どうして……?」

 何故か、大切な人と永遠に会えなくなった気がして───
 頬に伝う涙を、ルナマリアは止める気にはなれなかった。

 シンジュクゲットー───かつて『新宿』と呼ばれた街。
 7年前の戦争で多大な被害を受け、今、完全に破壊され尽くした街に、ナナリーはいた。
 開いた手には、最愛の兄に送った折り鶴。

「違う…違う……あれは…夢よ!」
 
 異形のナイトメアフレームに乗り、戦っていた自分。
 戦いを楽しんでいた自分。

「あれは…あんなの、私じゃあないわ!」

「残念だけど、あれは夢じゃあない」

 ナナリーの絶叫を遮る声。

「あれも、ナナリー・ヴィ・ブリタニアの別の顔なの」

 光を失い、瞼が閉じられているナナリーの目は、確かに『見た』。
 自分と瓜二つの少女が、自分を見下ろしているのを。

「私はもうひとりのあなた。ナナリーという少女の別のカタチ。そして今日より、ナナリー姫の騎士(ナイト)となる」

 その時だった。

「誰か……いるの?」

 失った視覚を補うため、常人より鋭くなった聴覚と嗅覚は、ナナリーに自分『たち』以外の人間が近  付いてくるのを知らせた。
「大丈夫、敵じゃない。ただ味方になるかは、あんた次第だけど」

 世界に裏切られ続け、遂に世界を捨てた少年───
 世界に見捨てられ続け、それでも世界が変わることを祈る少女───
 2人の出会いが生むものは、何か。



名前:通常の名無しさんの3倍 [2007/08/17(金) 09:30:58 ID:XEXDYcKp]
感想乙
続きを楽しみにされている方々には心苦しいのですが、元々プロローグだけ
書くつもりだったので、あと1回で終わると思います(;^_^A
最後は、シンジュク(跡地)でのナナリー(+ネモ?)と『運命』の
出会いです。

>>269
シンが本編より黒かったり、ダメ人間化(ルナ&ステラの言葉を拒んだ)して
いたりして、他の人にどう思われるかドキドキものだったのですが、
受け入れられたようで、ほっとしています
(でも、シンがいなくても歴史が全然変わらないってのは、さすがにやりすぎ
かなぁ…)

シンの存在をC.E世界から『消し去った』のは、(精神的な)逃げ道を
なくして、覚悟をより強固にする企みもあったりなかったり
ちなみに、マユの携帯も『消滅』しています(多分)。変わったC.E世界では、
アスカ一家『全員死亡』していますので(-_-;)

>>270
最初に書いていた通りなので……ごめんなさいm(__)m
機会がありましたら、続きの創作に挑戦してみてください


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