唯「第一次!」なのは「スーパー!」夕映「ロボット」シャロ「大戦です!」 第七話 焦燥! 小さくて、大きすぎる誤算

2011年06月25日 11:34

唯「まじーん、ごー!」

592 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [saga ]:2011/02/23(水) 17:09:24.79 ID:dusS23yA0

 第七話

 重慶 元連邦軍基地

 この基地を占領したギガノス軍はハルヒ・スズミヤ・プラートとその親衛隊のプラクティーズを迎えていた。

 そして、その着任早々にハルヒはモニター越しの月にいるドルチェノフ中将と会話をしている。

ドルチェノフ『それで、まんまと上海上陸を許してしまったというわけだな、プラート少佐』

ハルヒ「アンタたちが艦をケチってくれたおかげでね」

ドルチェノフ『言い訳は聞いておらん。貴様らの任務は即座にD兵器を取り戻すことだ』

ハルヒ「…………」

ドルチェノフ『その反抗的な目は止めたほうがいいと何度も忠告したはずだぞ、プラート少佐!』

ハルヒ「それは失礼。生まれつき、ドルチェノフ殿の前に出ると自然とこういう目つきになってしまうんです」

ドルチェノフ『貴様がそういう態度で出てくるなら、こちらにも考えはあるぞ……おい!』

みくる『涼宮さぁん!』

ハルヒ「みくるちゃん!?」

 モニターの前に連れてこられたのは首輪に鎖で繋がれた朝比奈みくるだった。
 目の端に涙をためるみくるを見てハルヒは憤りを露わにした。

ハルヒ「ドルチェノフ……! この卑怯者!」

ドルチェノフ『口の聞き方に気をつけろといったぞ、プラート!』

みくる『あぅっ!』

 ドルチェノフが鎖を引っぱり、みくるが苦しそうに呻いた。

ドルチェノフ『本来ならば、裏切り者の娘など即座に牢獄行きなのだぞ! その汚名を晴らす機会を与えてやっているのは誰だと思っている!』

ハルヒ「くっ……」

みくる『す、涼宮さん、私のことは……心配要らないですから……うっ』

ドルチェノフ『誰が喋っていいと言ったか!』

みくる『えほっ、えほっ』

ハルヒ「ドルチェノフ……ッ!」

 カメラに映らないところでハルヒの拳が震えている。
もしこの部屋にキョンがいれば、既にモニターに殴りかかっていたかもしれない。既にハルヒの脳内でドルチェノフは絞殺されている。

ドルチェノフ『貴様はD兵器を取り戻すことを考えていればよいのだ。わかったか!』

ハルヒ「わかってるわよ……!」

ドルチェノフ『ならばよろしい。期待しているぞ、プラート少佐』

 モニターがブラックアウトした。ハルヒは卓を思いっきり蹴りつける。

ハルヒ「ドルチェノフの屑ごときに!」


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 ハルヒは技術の名門プラート家に生まれたが、その出自に似合わない大胆な性格で地球連邦のスペースコロニーに対する傲慢な態度に反発したメサイア・ギルトールの下につき、専用のカスタム機ファルゲン・マッフを駆り独立戦争で戦果を挙げたが、思わぬところで世界は転がってしまった。

 ハルヒの父親でありギガノス帝国の技術者としてメタルアーマー開発の第一人者のラング・プラートが、突如D兵器の前身であるD計画の開始直前にあらゆるデータを廃棄して連邦軍に亡命したのだ。
 結果、ギガノス軍の兵器開発は停滞してしまっている。
 そのためにギガノス軍は総力をあげてラング・プラートの身柄の確保、もしくは連邦で開発されたD兵器の奪還を行っていた。

 ドルチェノフは連邦軍に個人的な私怨を持ち、ギガノス軍の中でも特に過激な思想を持つ男で、ラング・プラートが逃亡した直後にハルヒの反逆を懸念して友人と見られる朝比奈みくるを軟禁して逆に私兵化していた。

ハルヒ「今、ドルチェノフを誅することはできない……その上、このままD兵器奪還が遅れれば、マスドライバーの使用を強行されてしまう」

 ギルトール元帥の信頼篤く、軍内のエースとしてカリスマ性もあるハルヒがD兵器奪還のために月から離れ、尚且つ任務に失敗し続けることにドルチェノフは跳梁跋扈して軍制改革を図っているだろう。
 その狙いは、地球上に直接打撃を与えることが出来るマスドライバーキャノンの使用だ。

 メサイア・ギルトールは元々、スペースノイドを蔑視する連邦への杭打ちのつもりで決起したため、全面攻撃による連邦潰滅は望んではいない。
 国力差を埋めるためと牽制の目的でマスドライバーを有しているだけに過ぎない。
 その理想は、あくまでも地球環境の保護と、それを貪る連邦政府の腐敗部分の払拭なのだ。

 しかし、ドルチェノフは違った。彼は己の私怨のために連邦に勝利することを望んでいる。
 マスドライバーキャノンを使用すれば戦争を有利に進めることができる。
 そのためにハルヒの存在はじゃまだったのだ。
 ラング・プラートの逃亡から瞬時に朝比奈みくるを軟禁してハルヒを私兵化した狡猾さは、ギガノスの思想とはかけ離れたものだとハルヒは確信した。

ハルヒ「早くD兵器を取り戻さないと、ギルトール小父と私の理想が……」

 ハルヒは部屋を出た。そこにはキョン、古泉、長門が待っていた。

キョン「ハルヒ、ドルチェノフが何だって?」

ハルヒ「いつも同じよ、さっさとD兵器を捕らえろって」

古泉「D兵器を搭載した戦艦ホワイトベースは上海から連邦軍に合流したようです。新型パーソナルトルーパーも含めて、近いうちに作戦が展開されるでしょう」

ハルヒ「だったら先に仕掛けるわ。機動兵器の数ならまだ私たちのほうが多いから少しでも戦力を削ぐわよ」

キョン「しかし、もう何十日も働きづめじゃないか、ハルヒ! いくらお前でもぶっ倒れちまうぞ」

ハルヒ「私には! 一秒たりとも止めていられる時間なんてないのよ!」

キョン「だがな――」

ハルヒ「黙りなさい!」

 ぴしゃりと一喝したハルヒの眼差しは正面に立つキョンを捉えてはいなかった。
 もちろん、その後ろにいる古泉でも長門でもなかった。

ハルヒ「一刻も早くD兵器を倒して、みくるちゃんをあの外道から取り戻さなくちゃいけないのよ! 休んでも休まらないわよ!」

キョン「ハルヒ……」

 突き飛ばすようにしてハルヒはキョンの横を通り抜けた。
 あっという間にその後姿は小さくなるが、それ以上に疲労のオーラが見えていた。
 キョンのやや下に長門が進んできた。彼女はキョンを見上げている。

長門「彼女は出撃を取り消さない。なら、早いほうがいい」

キョン「長門……」

古泉「幸い、戦局は実際に我々に有利です。後は涼宮さんの負担を僕たちのサポートで減らすことです」

キョン「あぁ、わかったよ……」

 古泉と長門は急ぎ足でハルヒの後を追っていった。キョンは己の無能を呪った。


 ホワイトベース 格納庫

 シミュレーションを終えたヒカルと立夏、シノとアリアとスズがハッチから出てきた。

立夏「あーん! また負けちゃったよー、オネーチャーン!」

 開口一番、天使家の七女の立夏が隣の三つ上の四女ヒカルに泣きついた。
 六女の氷柱と同じくらいの負けず嫌いに加えてまだ十二歳のハッスル少女は爆発してくる感情を抑えることを知らない。

ヒカル「三対二だからしょうがないさ、立夏。それでも戦績は確実によくなっているんだから、落ち込むことじゃないぞ」

 ヒカルの言うとおりだった。シミュレーションを開始した当初はすぐに調子に乗って突っ込んでいって撃墜されてしまう立夏だったが、泣いて反省会を重ねるにつれて跳ねるような抑揚のある動きを上手にコントロールしてドラグナーチームを翻弄していくようになった。
 たった今だって、2型と3型を撃墜するにまで至ったのだ。

ヒカル(むしろ、成長していないのは私じゃないのか……?)

 胸に顔を埋める妹の頭を撫でながら、ヒカルは不安を抱いた。
 元々、何事も堅実にこなしていく彼女は自分の成長を実感しにくいタイプでもある。
 それでも剣道やボクシングなどは倒せない相手を倒したりすることでレベルアップを確認していたのだが、ヒカルが相手をしているシノとはチームとしてだけではなく、パイロットの技量でも差があるようだった。何度やってもその脇を抜くことが出来ない。
 つまり、ヒカルがシノを前に二の足を踏み続けている間に、立夏は一人で二機を落とすにまで達したのだ。

海晴「おつかれさま~、ヒカルちゃん立夏ちゃん」

ヒカル「わっ」

立夏「うぎゅ」

 教導官代わりをしている海晴がヒカルと立夏にまとめて抱きついてきた。立夏の鼻が強く胸を刺激して、ヒカルは赤くなった。
 霙はドラグナーチームのほうへ行って指摘をしている。

海晴「ヒカルちゃんも立夏ちゃんも最初に比べてうんと操縦が上手になったわね。もう私が言うことなんてないかも」

ヒカル「……!」

 姉の優しい腕の中でヒカルは慄いた。
 一度も勝つことができなかった彼女には、海晴の言葉をネガティブなイメージに捉えてしまう。

立夏「ホント、海晴オネーチャン?」

海晴「うん、立夏ちゃんなら、ヴァイスリッターに乗るだけならいいかな」

立夏「ホントに!? ウッワァーイッ!」

海晴「先に行って待っててね。私も準備していくから」

立夏「ハーイッ!」

 立夏がダッシュで格納庫を走っていく。それをヒカルは唖然と見つめている。
 触ることさえ許されなかった海晴のヴァイスリッター。それを許された立夏。
 ヒカルにとってはお前は役立たずだと言われたようだった。

ヒカル「…………」

海晴「あら、ヒカルちゃん、どうしたの?」

ヒカル「海晴姉、私は……」

 ――必要なのですか?
 問おうとしたが、それはできなかった。
 ヒカルの顔が海晴の胸元に寄せられたからだ。先ほど、ヒカルが立夏にしていたみたいに――

海晴「ヒカルちゃん、おうちのみんなが心配?」

ヒカル「えっ……?」

 急に何の話をするのだろうか――? そう思ったが、家族のことはすぐに頭に思い浮かんだ。
 0歳から18歳までの十九人姉妹。奇跡のような家族。そして、ヒカルが命に代えても護りたいと想う大切な家族。
 今はヒカルたち四人を除いて十五人で日本の家にいる。
 初め、ホワイトベースに乗っていくと言った時、天使家は大騒ぎになった。

麗「どうして海晴姉さまたちが戦争なんかに行かなくちゃいけないわけ!? そんな汚らわしい男たちが勝手に始めたことに私たちが巻き込まれなくちゃいけないわけ!?」

氷柱「そうよ! だいたいママも何考えてるのよ! 実の娘達を戦場に送り込むなんてどういう神経してんのよ!?」

 家族の中でも極度の男嫌いで『小学校はみんな公立!』のルールを曲げて私立の女子校に通っている九女の麗や特進クラスに通って戦争なんて愚かしくてくだらないこととわかっている氷柱の二人がやっぱり大反発した。

さくら「お姉ちゃんたち、遠くに行っちゃうの? もう海晴お姉ちゃんのおいしいプリンも食べれなくなっちゃうの? さくら、そんなのさみしくなっちゃうの……うわぁーん!」

綿雪「ユキも……せっかく病気が治って、家族みんなで暮らせるはずなのに……」

小雨「さくらちゃん、ユキちゃん、泣かないで……ね」

 真璃や虹子、青空もつられて泣き出す。年少組の彼女たちは戦争はよくわからないが、『大好きなおねえちゃんがいなくなる』ことが嫌なのだ。
 小学生で少しは物事がわかるようになっている星花や夕凪、吹雪も普段の元気をなくしてしまっている。
 それを見てヒカルは酷く胸が締め付けられる思いだった。

あさひ「ばぁぶ! だばっぶ! ぶっぶー!」

 赤ん坊のあさひも怒っているように見える。それを声援のようにして氷柱はまた机を叩いて声を荒げた。

氷柱「ホラ見なさいよ、あさひだって大反対よ! それでも姉様たちは行くっていうの!? 立夏まで連れて!」

立夏「氷柱オネーチャン! 立夏はイヤイヤ行くんじゃないよ!」

氷柱「だから! そういう考えが甘いって言ってんのよ! どうしてウチの家族ってばこうもお人よしばかりなのかしら!」

 バンッ! と一際大きい音で机を叩く。それにシンクロしたように咳き込む声が聞こえた。

観月「げほっ、う、うぅ……」

蛍「あぁ、氷柱ちゃん、大声出しちゃだめよ……観月ちゃんに響いちゃう」

氷柱「あ、ご、ごめんなさい、ホタ姉様……」

 九尾の狐の守護霊を持つ観月は人一倍霊感に鋭く、その影響を受けやすい。
 人の魂の行き着く場所とされているバイストン・ウェルからやってきたオーラ力にあてられてしまったのである。
 気が強いが、それ以上に家族の身を心配するゆえに熱くなる氷柱だが、乱れた呼吸を繰り返す観月にさすがにクールダウンした。
 それを見計らって蛍と一緒に観月を看ていた三女の春風が優しく声をかけた。

春風「ねぇ、氷柱ちゃん。氷柱ちゃんがすごくみんなのことを想ってくれているのはとてもよくわかるわ。海晴お姉ちゃんに霙ちゃん、ヒカルちゃんと立夏ちゃん……春風だってすごく心配だもの……いなくなっちゃうのはイヤ……でも、ママがもっと心配したのは、みんなが本当の意味でばらばらになっちゃうことなの……」

氷柱「は、春風姉様……」

 春風の言いたいことが、氷柱にはわかった。現在は歴史が大きく動こうとしている時代なのだ。
 その世界で、ただそこにあるだけで奇跡のような十九人姉妹が、いつ引き裂かれるのかわからない。
 だから、彼女たちのママは――

霙「私たちはなにも死ににいく訳じゃないさ、氷柱」

氷柱「霙姉様……」

 ここまでずっと一言も喋ることがなかった霙の声音は、この場で最も意味のあるものとなった。

霙「とどのつまりは、ここに帰ってくるために、少し長く家を空けるだけさ」

氷柱「そ、そんなこと言ったって……か、かえっ」

 それ以上は氷柱の喉から出てこなかった。そこから先のことを想像するだけで心臓が張り裂けそうになる。

海晴「氷柱ちゃん」

 端正な顔がぐしゃぐしゃになるのを必死で止める妹を、長女の海晴がそっと抱きしめた。
 何度こうして抱擁されたことだろう。そして、これから何度こうしていられるのだろう……

氷柱「海晴姉様……」

海晴「私たちが出かけるのは遠い場所かもしれない。でも、帰るおうちがないと、私たちもがんばれないわ。だから、氷柱ちゃんはここでみんなを守ってね。春風ちゃんと蛍ちゃんだけじゃ、ちょっと頼りないからね」

氷柱「……はい」

 氷柱がその夜、何年ぶりかの大泣きをしたのをヒカルは知っていた。
 午前三時、こっそりと家を出ようとしたヒカルたちを家族全員が起きてきて盛大に見送られた。
 そのために、氷柱が全員をたたき起こして自分の部屋に集めていたこともすぐに気づいた。

海晴「ヒカルちゃんは、みんなにとって頼りになるお姉ちゃんよね。私も霙ちゃんもすごく頼りにしているのよ」

ヒカル「だけど、私は……」

霙「やあ、こんなところでいつまでひっついているんだ、ヒカル?」

ヒカル「えっ、霙姉……?」

 黒髪のショートボブにグレーのパイロットスーツを着た霙が近くまでやってきていた。
 上からマントを羽織っているが、霙がパイロットスーツを着用するのは出撃するときだけだ。
 それ以外では断固として着用しようとしない。いったいどうしたというのか?

霙「ぼうっとしている時間はないぞ、ヒカル。早くアルトの速度に慣れて次のステップに進んでもらわないといけないんだからな」

ヒカル「えっ、えっ? 霙姉、それはどういう……?」

 やや困惑した面持ちで二人の姉を交互に見るヒカルに霙は少し非難するような目を海晴に向けた。

霙「なんだ、まだ言ってないのか? 我々の時間は無限ではないのだから、やるべきことは早く済ませるべきだろう」

海晴「あら、姉妹のコミュニケーションは決して無駄なことじゃないわよ。霙ちゃんもどうかしら?」

霙「フッ、海晴との接触は厄介な反応を起こしてしまう。私は先に待っているぞ、ヒカル」

ヒカル「あ、あの、いったい何のことを……」

海晴「ウフフ、合格は立夏ちゃんだけじゃないのよ」

ヒカル「えぇっ?」

海晴「ヒカルちゃんはこれから霙ちゃんといっしょにアルトアイゼンに乗ってもらうのよ」

ヒカル「で、でも私は全然――」

海晴「ヒカルちゃん。ヒカルちゃんはさっきの訓練で何分、シノちゃんと戦っていたのか知ってる?」

ヒカル「え、い、いえ……」

 戦闘中に時間のことなど全く入ってこない。
 少しでも目を切ればやられてしまうし、終わったあとは負けの喪失感でそれどころではないのだ。

海晴「ウフフ、ヒカルちゃんは目の前のことに集中するのはいいけど、もう少し視野を広くするのが新しい課題ね。三十分以上も戦っていたのよ」

ヒカル「そ、そんなに……?」

海晴「初めの頃は立夏ちゃんに振り回されるのもあったけど、一分でバッサリだったのが、今じゃすっかりシノちゃんを釘付けにしているのよ。だから立夏ちゃんもアリアちゃんとスズちゃんに追いつけるようになったのよ」

 ヒカルは面映い気持ちになった。その背中を押すようにして格納庫を歩きながら海晴はヒカルをベタ褒めしていく。

海晴「本当に、いつも色んなスポーツをしているかしら。ピカ一の集中力だと思うわ。霙ちゃんも言っていたわ。これならアルトアイゼンの加速にも対応できるだろうなって」

 十九人姉妹の長女だけあって、あっという間にヒカルの沈んでいた心を持ち上げてしまった。
 やっぱり、海晴姉にはかなわないな、とヒカルは口元を綻ばせる。

 しかし、意気揚々と姉の愛機に乗り込んだヒカルと立夏の二人だったが、アルトアイゼンの爆発的な加速力と急停止したときの反動にヒカルは胃が飛び出ると錯覚し、立夏はヴァイスリッターの戦闘機よりも激しいアクロバティックな飛行に目を回して、仲良く医務室送りとなってしまった。

立夏「うへぇぇぇ~、気持ちワルイぃ~……たこ焼きとシュークリームとたいやきとアイスクリームとポップコーンとハンバーガーをいっぺんに食べた後みたい~……」

ヒカル「やめろ、立夏……食べ物の話をするな……こっちはそれらを全部吐き出した後みたいなんだから……」

 幸い、ハルヒたちギガノス軍が攻め込んでくるのは、この十時間後だった。


 ホワイトベース ブリッジ

オペレーター「敵機接近! 数は十六! 先頭はファルゲン・マッフです!」

シノン「蒼き鷹、ハルヒさんね!」

オペレーター「陸上二個中隊も接近! 混成部隊です!」

シノン「そちらは連邦の既成部隊に任せましょう。私たちは敵機動兵器を狙います! ドラグナーチーム、パーソナルトルーパー部隊、発進!」

シノ「了解! ドラグナー1、出るぞ!」

 中国の上空に天草シノが乗るドラグナー1型が駆ける。
 そのときには既にハルヒたちギガノス機動部隊は戦闘配置についたばかりの連邦軍の基地に向けてミサイル攻撃を開始していた。

ハルヒ「米粒一つ、弾薬一グラムたりとも残してやらないわよ、燃えなさい!」

 シュボッ、ドドォンッ! デュアルミサイルを連発し、あちこちに火柱をあげていく。出遅れた連邦兵士が物資と一緒に吹っ飛んでいくのも見えた。それほどハルヒは地上と近い位置を飛行していたのだ。

 ファルゲンの前方で何かが上がってきた。残った煙の細さから対空砲の種類であることはすぐにわかった。

ハルヒ「腐った連邦に与するゴミ虫の分際で、私に歯向かおうって言うの!?」

キョン「ハルヒ!?」

ハルヒ「やってやろうじゃないの!!」

 ファルゲンが急に旋回して、対空高射砲部隊と思しきポイントにマッフ・ユニットにつけられた三連マルチディスチャージャーを放つ。
 すぐに一際大きい火柱が上がり、ハルヒは「それ見たことか!」と鼻で笑った。

キョン「バカやろう! 動きを止めやがって!」

 キョンの怒鳴り声がスピーカー越しに響くが、自動音量調節が働いて、警告程度にしかハルヒには聞こえていない。
 だが、今回の奇襲作戦は開始してから敵機動兵器の追撃がギリギリで届かない範囲での爆撃を行うものだ。
 当然、その緻密な計算は長門有希が導いたものである。つまり、それ以外の行動は絶対にしてはいけないのだ。

ハルヒ「どうせファルゲンには追いつけないわよ!」

 やはり焦っている。キョンが戻るべきか逡巡しているうちに、長門はレーダーに反応していた。

長門「D兵器、三機接近」

古泉「来ましたか、予想より速かったですね」

キョン「ハルヒ! 早く戻って来い!」

ハルヒ「わかってるわよ!」

長門「降下加速を利用している。追いつかれる」

アリア「いくわよぉ……轟けぇっ!」

 ドォン! 連邦軍基地から離れるとすぐにドラグナー2型のレールキャノンが四機に襲い掛かった。
 その火線に隠れるようにして1型と3型は接近していった。

スズ「行きます、会長!」

シノ「ああ、頼んだぞ、スズ」

 合図で3型から対レーダーミサイルが発射される。
 佐世保基地を出発してから数度の小競り合いをしてきた中で、長門の乗るヤクト・ゲルフ・マッフが、プラート隊の行動の全体をサポートする機体であることがわかったため、先にその動きを制限する対レーダーミサイルがスズの3型に搭載されたのだ。

長門「私を狙ってくる? 無駄」

 レビ・ゲルフのジャミング能力に誘導ミサイルは無効化される。
 誘導弾は特定周波数に反応してコントロールを自動で決定している。
 それをジャマーで乱されて対レーダーミサイルはあさっての方向へふらふらと落ちていってしまった。

 ガガガガガガガガ! 

長門「……!!?」

 機体が大きく振動して長門有希はその人形めいた顔に一瞬だけ狼狽の色を浮かべた。
 サブモニターが装甲の損耗率を知らせた。

長門「遠距離射撃……レールガトリングガン?」

 新しい武器を備えていたのは3型だけではなかった。レールキャノンを撃った後の2型が二連装式レールガンをレーダーミサイルから反秒遅れて使用したのだ。
 シミュレータで何度も訓練したフォーメーション攻撃の一つで、その要はやはり高機動、接近戦用機体のドラグナー1型だ。

シノ「はああぁっ!」

ハルヒ「ちっ、またD兵器、邪魔をするな!」

 とにかくシノがハルヒのファルゲンの動きを抑えなければならない。この一対一の戦闘にヒカルとのシミュレータ戦闘を活かすのだ。

ハルヒ「動きがよくなっている……D-1のパイロット。もう素人じゃない!」

 ズギャアァッ! ドラグナーとファルゲン、二機のレーザーソードが重なった瞬間、ハルヒは自分のソードを手からわざと離して加速、一気に離脱しようとした。

シノ「くっ!」

 手放す際に若干の捻りを加えられたハルヒのレーザーソードが跳ねるように空中を舞う。
 それにシノが翻弄される間に濃い蒼色の機体は全速を出していた。

シノ「しまった! 逃げられてしまう」

 すぐにミサイルポッドを放出するが、完全に手遅れだったらしい。既にモニターには航跡だけしか映っていなかった。

 結局、ギガノス軍の作戦は大成功に終わっていた。
 ほんの五分にも満たない戦闘時間だが、身体が感じる疲労は工場のライン作業のフルタイムにも匹敵する。
 ハルヒはシートにもたれかかって深く息を吐いた。手が震えている。初陣以来だった。

ハルヒ「……各機、損傷は?」

キョン「長門が軽微だが攻撃を受けた。他はメタルアーマーが二機撃墜された」

古泉「代わりに、陸上部隊が将校を捕らえました」

ハルヒ「そう、少しは交渉に使えるかしらね。有希、大丈夫?」

長門「へいき」

 無機質な声に安堵する。目の前が霞んで見える。戻ったらさすがに休んだほうがいいかなとハルヒが考えたとき――

長門「高速接近――攻撃――二秒――ッ!」

 ギュボォッ! ハルヒの左端をエネルギー光が編隊を貫いた。そして――

キョン「なっ、長門ぉーっ!」

 手足の焼け爛れたレビ・ゲルフが暴発する飛行用フォルグ・ユニットに攫われて連邦軍領域に墜落していく。
 白煙に混じるオレンジ色の光りはエンジンの火が粉塵に干渉しているものだ。

ハルヒ「ゆ、有希……?」

 有希が、落とされた? あの有希が? 無表情で、必要なこと以外は全然喋らないけど、本当は心配性でいつもみんなの身を案じて、みんながちゃんと帰ってこれるように周囲に目を配っている有希が――……

ハルヒ「私が……せいで……?」

 「離せ、古泉!」「いけません! あなたまで行っては――!」通信の声が遠く聞こえる。
 ぼやける視界は徐々に暗闇に閉ざされている。

ハルヒ「ごめんね……有希……」

 計器が滲んで見え、ハルヒは意識を手放した。



長門「…………」

 木がクッションになってくれたらしく、破壊されたのは手足とフォルグ・ユニットで、胴体は装甲の半分がもっていかれたが内部にダメージは少ない。
 どうやら手加減をしてくれたらしい。ビーム兵器は出力調整で実弾兵器よりも多用途に扱えるのだが、ギガノス帝国では資源の関係で弾丸やミサイルのほうが生産しやすいため、研究は遅れている。

長門「ハッチも、開かない」

 手動で開けるために立ち上がろうと試みたが、落下の負荷にまだ下半身が落ち着きを取り戻していないようだ。

 ここはどこだろう。少なくとも自軍の領域ではないようだ。落下時間から僚機到着までの時間を計算する。
 ハッチが開くとき、誰がいるのだろう。救出されるなら――

長門「…………」

 そこで思考を止めた。外部操作でコクピットが強制排出される音だ。
 しかし、眩しい太陽を背に受ける影は想像していたものではなかった。

霙「動かないでもらえるとありがたい。悪いが身柄を拘束させてもらおう。大人しく着いてきてくれればぞんざいには扱わないと約束する」


 第七話 焦燥! 小さくて、大きすぎる誤算 完



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